「今そこにある危機」
ジャック・ライアンシリーズの映画のタイトルですね。
冷戦終結後の国際情勢を背景にエージェントの活躍を描いた映画。公開当時の世界情勢と今とでは全く違う様相を呈していますが、製造業、メーカーは今、重大な危機に瀕していると言えます。

生産拠点をどこに置くか

Braveridgeは、全ての製品を、国内、福岡県糸島市の自社工場で生産しています。
創業当初は、海外生産を行っていましたが、2013年に福岡工場を設立。そこが手狭になった2017年には、今現在の糸島工場を竣工させ、稼働開始しました。

「なぜ今どき国内に自社工場を?」
これはよく聞かれました。

生産拠点をどこに置くか。
これを考える大きな要素としては、一般的にはQCD、

  • 品質(Quality)
  • 価格(Cost)
  • 納期や入手性(Delivery)

なんて言ったりしますが、ここではそれらと併せて、海外生産で重要となる以下要素も絡めて1つ1つ見ていきましょう。

  • 為替リスク
  • コミュニケーションリスク
  • 地政学的リスク

コスト

まずは、誰もが真っ先に考えるであろう、コスト。
多くの会社で海外生産を行っているのは、日本で作るよりもコストが安いから。というのが一般的な認識でしょう。

でも、本当にそうなのでしょうか?

日本企業が中国に生産拠点を移し始めた当時と比べると、中国の給与水準は格段に上がっています。日本との人件費の差は以前に比べると縮小しています。
しかも、中国での製造においては、1社に委ねて生産を依頼しているつもりでも、その実、複数社が絡んでいることが少なくありません。複数社それぞれが必要な利益を乗せれば、当然価格はより高いものになります。彼らはそこは妥協しませんからね。

安いと信じていると、かなりぼったくられているなんてことも耳にします。
一度、国内を含めて検証してみることをオススメします。

また、海外工場に製造を委託している企業では、コストダウンの手段が極めて限定的になります。部品を買い叩くしかコストダウン要素がないんですね。
当社のように自社工場で生産していると、如何に工場での工数を減らすか、設計から治具の制作に至るまで、ここを考え抜くことができるんですよね。

つめり、このコストに関する部分は、単純な買い入れ単価だけでなく、製品に関わる全てのプロセスをトータルで考える視点が必要だと考えます。
ここはまた改めてじっくりと。

為替

そして、コストに現在大きく影響しているのが為替であることも言うまでもありません。
150円/$だと、115円/$時代と比較して、単純に1.3倍のコストがかかります。

数量/納期

数量と納期。
ここに密接に関わってくるのが「物流」です。
海外で生産すると、基本的にはパレット単位、コンテナ単位でしかモノが動きません。
つまり、そこで最低ロットと納期が決まります。
そして、コロナ禍をトリガーとして世界的に発生したコンテナ不足による物流の遅延と物流費の上昇は、未だ解消には至っていません。
これに苦しまされている会社も多いでしょう。

品質

ここも苦い経験をしている会社が多いと思います。
品質意識、許容レベルの違い。現地に人をやらないとクオリティコントロールすらままならない。ロットごとに違うものがあがってくる、例えば色が違うなんてこともザラ。
現地でチェックを入れていないと、日本に到着した製品から大量の不良品が発生し、場合によってはロットアウトとなることも。

コミュニケーション

この品質問題と密接に関わってくるのがコミュニケーション。
コミュニケーションに時間がかかって物事が前に進まない、こちらの想定と違うモノができてくる、それを指摘してもなかなか直してもらえない、不具合に対しても真摯に対応してもらえない、などなど。
結局、これらも全てコスト的に割を食っていることになります。

地政学的リスク

そして、そして。

さ、ここからが本題です。
今後の世界情勢を睨んだときに無視できないのが、地政学的リスク。

「地政学的リスク」とは。

特定の地域が抱える政治的、軍事的、社会的な緊張の高まりが、地理的な位置関係によって、その地域や関連地域の経済、世界経済全体の先行きを不透明にしたり、特定の商品の価格を変動させたりするリスク


ロシアのウクライナ侵攻により、各企業がロシアから撤退せざるを得なくなった状況は今もなお続いています。ロシアでこれです。

もし「台湾有事」が勃発したら…

台湾有事

もし「台湾有事」が勃発したら…

少し想像するだけで分かると思います。
世界の工場たる中国と台湾での有事です。

製品の生産、供給に及ぶ影響は、ロシアのウクライナ侵攻の比ではありません。
中国に生産拠点を頼っていた場合、全く製品が作れない事態に陥るのは間違いありません。
コロナ禍によるロックダウンでそれを経験した企業も多いはずですが、そのときよりもさらに酷い状態がもっと長期的に続く事態が容易に想像できます。
製品販売による対価を得ている企業にとっては死活問題です。

「台湾有事」は起こるのか?
課題認識はありつつも、なんとなく決断を遅らせていませんか?
海外に目を向けると、既に、実際に取引のあるヨーロッパのメーカーは、台湾や中国から製造拠点を移管する動きを始めています。

これらのリスクを総合的に判断し、それでも中国での生産を続行するかどうか。ここはきっと大きな分水嶺となるでしょう。

日本生産に迷ったら

もし仮に、日本での生産を真剣に考え始めるとして、、、
日本では、自社で工場を持つメーカーもずいぶん少なくなっています。
どこに相談していいのか迷ったら、選択肢の一つとしてBraveridgeにお声がけください。
何かお手伝いができるかもしれません。
EMSとして工場の機能をまるごと、あるいは部分的にも提供可能です。
当社が開発に携わってない製品でもお気軽にご相談ください。

それにしても価格が…
そんな不安を感じる方も多いはず。

次回はこの価格の部分にもう少しフォーカスしてご説明します。

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