不具合の再現

お客様から不具合解析依頼がありました。 
不具合内容は、BLEの通信が途切れるとのこと。
調査をしてみると、通常時は問題ないのですが、基板に応力がかかっているときだけ電波が出ていない...部品のハンダの接続状態が怪しいですね。。。 

いくつか同じ現象が出ていたので、試しに心当たりの部品をヒートブロアで再加熱。
一度部品のハンダを溶かして、再接続してみましょう。
すると、基板に応力がかかっても電波が出るようになりました!ハンダの接続状態が悪かったんですねー。 

でも、なぜこんなことが? 
部品を実装するときにはX線でハンダ接続状況の確認をしています。出荷前には電波の検査もしているので問題は起きないはず。。。 

BLEの電波は、SoCチップが水晶振動子のクロックを利用して作っています。クロックが出ないと電波も出なくなります。正常なクロックが見えるのか確認してみましょう。 

応力を加えていないときは問題ないのですが・・・ 

応力を加えるとクロック波形がでませんでした! 

クロック波形がでていないので、SoCチップと水晶振動子の間で何か異常が起きているのでしょう。はんだ付け温度まで熱を加えると正常になるので、SoCチップと水晶振動子の間のハンダが怪しいです。それぞれのハンダ接続状態を見てみたいですね。 
 
しかし、部品の接続状況を本社で確認しようと思っても、面実装部品なのでハンダ面を見ることができません。 
これは、解析のプロに頼むしかない! 
 
ということで解析のプロ、メルコセミコンダクタエンジニアリング株式会社さん(以下メルコセミコンさん)に断面解析を依頼しました。 

不具合解析依頼

水晶振動子は基材がセラミックなので硬度が高く、断面研磨が難しい。他社さんでも見積もりを取ったのですが、セラミックということで断面解析依頼を辞退されました。しかし、メルコセミコンさんは快くOKしていただきました。 
ありがたい! 
 
数日で解析結果が届きました。 
中身を確認してみると素晴らしい写真です。拡大率も大きいので、めっきの界面も見えています。フィレットもしっかりできていることが確認できました。やはりハンダの初期不良ではなさそうです。 

そして、SoCチップ側を見てみると、ハンダ部分で剥離が確認できました。素晴らしい!解析ありがとうございました!! 

不具合発生の要因分析・再現試験と対策

今回、ハンダクラックとハンダ剥離が起きていたので原因を考えてみます。出荷前にひとつひとつ検査をしているので初期不良で起きることは考えづらい。そのため、一度は接合されていたけど、出荷後に何らかの要因でハンダ接合面が剥離したと考えるのが妥当です。 
 
不具合品は、定常時は正常で、基板に応力をかけると不具合が再現します。つまり、お客様の使用環境で応力がかかっていたことを意味します。また、ハンダ剥離はSoCチップでおきています。SoCチップは今回の基板の中で面積が大きな部品のひとつです。 
面積が大きな部品は、基板に応力がかかったときに基板と部品の間でひずみが大きくなります。今回はそのひずみがハンダ剥離を起こしたのかもしれません。 
ハンダ剥離が起きる原因の一つに、繰り返し応力があります。今回のハンダ剥離の原因も、ハンダ接合部へ繰り返し応力がかかったのかもしれませんね。 
 

ということで、起きている現象がハンダ剥離だとわかり、原因は基板への繰り返し応力の可能性が考えられたので再現試験をしてみました。再現試験は、製品筐体への繰り返し圧迫試験です。非常に強い圧力だけれど、筐体やその他の部品に破壊がないレベルの力に抑えます・・・・すると、同じ不具合が再現しました! 
  
基板への応力の要因を探ってみると、筐体に圧力を加えることで基板に応力がかかる構造になっていることがわかりました。不良が起きないようにするには、筐体の圧力が基板に伝わらない構造にしてもらう必要があることがわかりました! 
そして、筐体を変更してもらったあとに繰り返し圧迫試験をしてみると、BLEの通信不良が起きることはありませんでした!
解決です!!

 

すばらしいご近所さん

解析のプロが近くにいると仕事がしやすくていいですね! 
今回依頼したメルコセミコンさんなら、本社から自転車で15分の距離です。自分で断面解析したいなら、三次元半導体研究センターで断面解析機器一式が借りられます。こちらは自転車で30分の距離。自分でより細かく見たいなら電子顕微鏡やイオンミリング装置を九州大学で借りられるようです。こちらは自転車で20分の距離。(それぞれの時間はロードバイク換算) 


ご近所さんで色々解析できる環境が整っているなんて、福岡のこの周辺は充実してます!!

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