弊社では、独自にRFモジュールを開発しています。
基本的には、完成品設計も行う視点でこのRFモジュールを開発しています。

実はこの《RFモジュール》ですが、無線規格に関係無く、2種類あるのです。
①アンテナ内蔵モジュール
②アンテナレスモジュール
この2種類です。

現在、Braveridgeでは②しか販売しておりません。
これにはちゃんとした理由があるのです。

私共の無線エンジニアの理念としましては、
「アンテナを内蔵したモジュールは、売ってはいけない」
という考えです。

これには反論もあるとは思います。

殆どのお客様は、①アンテナ内蔵モジュールをご要望ですw
何故ならば、楽ですし、安心だからです。

それでも、弊社は絶対に①アンテナ内蔵モジュールは販売しません。今後もです。

そっちの方が売れるんですけどねwww

それでは、以下に私共の経験を含めた考えをまとめます。

  • アンテナ付きモジュールのアンテナのマッチングは、電波法申請時・評価時の評価ボード上で最適になる様にマッチングされています。
  • 評価ボード上のモジュールのマッチングの中心周波数(V.S.W.Rのピーク点)は、帯域全体の80%付近(例えば、2.400~2.483GHz帯ですと、2.46GHz付近)に合わされているようです。中心ではないという事です。
  • アンテナ付きモジュールを、ユーザーが作成したメイン基板に実装するだけで、先に書いた同調を取ったはずの中心周波数は更にグッと下がります。
  • 次に、アンテナ付きモジュールを実装したメイン基板を、プラスティックの筐体に入れるだけで、同調を取った筈の中心周波数が更に更にもっと下がります。アンテナの近くに金属があるかどうかでは無く、プラスティックケースに入れただけで下がります。プラスティック筐体との距離を話しておけば良いというものでもありません。
  • 以前、Bluetoothの筐体で、ネジ無しのプラスティック筐体のリブ(プラスティック)がアンテナの近くにあったというだけが原因で、2.3750GHzまでも同調点が下がった(まさにそうなってしまっている現物を見た事があります。つまり、2.4GHzアンテナとして機能してない状態です。この状態ですと、5m~10m位しか飛ばないです。

この様な設計がされている2.4GHzの製品は、結構多いのです。

ここで少し話は逸れますが、大事な事を言う必要があります。

《RFエンジニアとアンテナエンジニアは、中華料理とイタリア料理くらい違うエンジニアリング》って事ですw

RFエンジニアは、アンテナ理論を解って居ない人が多いです。

アンテナエンジニアは、意外とRF設計も解って居る人が多いです。ただし、アンテナエンジニアの人数は圧倒的に少ないんです。

ここで、話を元に戻します。

「RFエンジニア視点では、アンテナはモジュールに実装した方がよい」のかもしれません。アンテナがあまり解ってないので。。。または余り解ってないというのを周りにバレたくないのでw。。。これ結構マジですw

しかし、「アンテナエンジニア視点では、アンテナはRFモジュールに実装してはいけない❗」という事になります。
※「しない方が良い、ではなく、してはいけない❗」です。

つまり、最終組込製品に最適なアンテナを選択し、そのアンテナを最終完成品として《アンテナマッチング》することが正解なのです。
これですと、本来の電波伝播のパフォーマンスを出す事が出来るわけです。

この結果、弊社のBluetooth Low Energyの完成品で通信距離を見ますと、
見通し評価(障害物無しの、平地評価)で、
BT4.2:200~250m ※TxPow:+4dBm
BT5.0-LongRange:1.1km(=1,100m)※TxPow:+8dBm
位は飛びます。※ボタン電池動作での、参考値です。

別の参考値としましては、
JR博多駅構内というのは1000人以上の人の往来がある、超混雑エリアです。そして、全員がスマホを持って往来している様な電波状況としては最悪な環境です。

こちらで試験してもBT5.0-LongRangeでは200m位の通信距離は確保出来ていました。これはBluetoothの規格自身の仕様としての完成度が高い証拠だと思います。後は、アンテナ設計です。

「Bluetooth Low Energyって、所詮,5~20m位しか飛びませんよね~w」

という話は凄く一般的に言われています。

しかし、それって、『マトモなアンテナ設計を施していない設計の問題』であって、『Bluetooth Low Energyの規格やICが原因では無い❗』んです。

少なくとも、現物筐体を込みのアンテナ設計をしなければ、こんな感じになります。我々も覗きみて、「あ~あ~。やっちゃってるよ~w」って感想を持つことが多いです。

すると、こう言う事を言うモジュールメーカーがあります。
「筐体マッチングを取ります!」
って話です。

しかしです。モジュール上にアンテナとマッチングコンポーネントを乗せて電波法を取得しているわけです。

このマッチングコンポーネントを変えるという行為は、《基本・原則として、電波法違反》なのです。
これは、UL Japan社にも確認済みです。

因みに、ここには非常にテクニカルなw 裏技がありますww
これは流石にここでは書けませんがw マッチング部品を変えても良いという裏技はありますw これは書けません!www

しかし、それはせめて、年間数万台のオーダーをしないと、メーカーはやってくれないです。

すると今度は、「②アンテナレスモジュールを使う時に、アンテナはどうするんだ!?」

という不安があると思います。

弊社もモジュールでは、日本電波法に基づき、アンテナレスモジュールの電波法認証時に、「使用するアンテナのリスト」を提示しているのです。

弊社では、2.4GHz帯のアンテナですと、300種類前後のアンテナをリストとして電波法取得時に登録して貰っています。
これだけ種類があれば、選択には殆ど問題ないでしょうw

この中から一つ選んでいただければ、100%電波法を守っている事に成ります。

更には、このリストされたアンテナのマッチング変更行為は、電波法上「マッチング変更して良い」とされています。
これもUL Japan社に確認済みです。

この方法ですと、アンテナの変更や、筐体毎のマッチングを変えても、完全に電波法を遵守している事になるのです。
安心してください。

そして、アンテナの電波伝播特性も最大限に引き出せるという事になります。良い事だらけです。

因みにですが、デジタル無線の場合は、送信と受信の周波数が同じですので、「送信の輻射効率(電波伝播特性)が悪い=受信の受信特性も同様に悪い」
って事にも成りますよね。
つまり、送信も受信も悪いので、全く飛ばないという事になるわけです。
これがBluetooth Low Energyは飛ばない。とか、WiFiも以外と飛ばないとか、サブギガ(920MHz)のLPWAも言う程飛ばないとなるんです。5km飛ぶっていうLoRaが実験では200~400mしか飛ばなかった、というのは無線の設計の問題なんです。

するとこんなお客様と出会う事も結構あります。
「いや~、弊社のこの製品は10m飛べば良いんで、現状12m飛んでますから満足しています」とw

所が、最大限にパフォーマンスをだしておけば、そんなに飛距離が要らない人ならば、送信Powerを下げることが可能となります。これは消費電力を下げられるって事に成りますよね。

どっちが正解かという事です。

また、本当は200mは飛ぶのに10mしか飛んでいないというのは、アンテナの輻射特性(アンテナ特性パターンとか言います)はボロボロのグチャグチャになっています。また、量産バラツキも半端無い状態に成ってると言う事です。

実は、このアンテナの最適化も、消費電力を下げる弊社のノウハウでもあるわけです。

ここで、ちょっと笑い話なのですが、「Bluetooth Low EnergyでNFCみたいに《10cm~20cmしか飛ばない》様にして欲しい!」という要望が結構あります。

実は、これが一番難しいんですw 超難しいです❗w
もうトンでも無く難しいです❗ww

なぜなら、弊社がちゃんと設計すると、アンテナを切り離して、送信パワーも最低のWhisperMode (TxPow: -30dBmや-40dBm)にしても、50cm以上飛ぶんです。

アンテナ無しで、最小の送信パワーでも50cm以上飛ぶのを、どうやって10cm~20cmにするのか?
この難しさは理解して頂けると思いますw

最終的には、10~20cmを実現したのですが、これは”分かっているRFエンジニア同士”しか分からないような笑い話的な解決方法で実現したんです。

そういうのも近く紹介したいと思います。

いかがでしたか?
BraveridgeにはRFも分かるし、アンテナもバリバリ分かるエンジニアが2名も居ます。

そういう我々が良くいうのは、
「長岡京は、分かってるわ~!流石やな!あそこ良く分かっている!」です。

弊社の様なマイクロ企業が上から目線でそんな評価なんかできる相手ではない程の超大手の電子部品メーカーですw

こちらも、RFモジュールを販売していますが、ここもアンテナレスモジュールしか出していません。

でもやっぱり思うんです。
「あそこは良く分かってるわ~」とw

最後に、
アンテナ付モジュールの方が、精神的には安らかだとは思うのですが、結果のパフォーマンスとしては、決して安らかになれないのを理解して頂ければ幸いです。
事実、最終パフォーマンスが出ずに、お蔵入りとなった製品のご相談も結構あるんですよね。

是非、勇気を振り絞って、考えを改めましょう。

ほんとは、アンテナ付モジュールの方が売れるので、そっちが正解なんですけどねw

社長としてはビジネス面では失格なのですwww

自称《有るべきRFモジュールの推進委員会》座長の私からのお願いですwww
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