前回に続き、早く・フレキシブルに動くモノづくりそのものについて触れてみます。

当社の商材はIoT機器です。
基本的な構造は、心臓となるプリント基板回路があり、それを筐体で覆うというものです。
そして、筐体には、表示部、操作部、接続端子などが付きます。
筐体は基本、樹脂成形品を使用していますので当然金型製作が必要です。
しかし、当社商材は、金型活用の最大メリットである何十万台も出るような少品種大量生産型ではありません。
ベンチャー企業らしく、様々な企画から生まれる商材が多く、多品種少量生産そのものです。

加えて、一つの商材でも何種類も仕様がありますので、例えば、外装である筐体には複数の端子形状があったり、形状が微妙に異なったりします。
大量に流れ、数量が読めるような商材であれば、金型構造に各形状に合う入れ子構造を持ち、それらの組合せで何種類もの成形品を製作していきます。
ただ、こういった金型入れ子の交換を都度やっていると、成形は中断ばかり。段取り替えで全体のリードタイムは増えるだけです。また、当社の事業性格からは事前の数量予測が正確に出来るものでもありません。

つまり、顧客が求める仕様が最後に分かって、それをいかに早く作り上げるかが大事な訳です。
前に戻って、金型構造ですが、当社では最近このやり方を変えつつあります。
それは、最初から完全な最終形状の部品を作らなくてもよいのではということです。
つまり、金型による成形を最終部品の形状の一歩手前までの基本形で終了させ、そこからは二次加工で仕上げるというものです。例えば切削工法になります。
昨今の切削技術は加工機の進化によって、恐ろしく早く加工できるようになってきました。
当社にある加工機は何千万円もするような高価な多軸マシニングセンタではなく、1軸だけのちょっとしたNC切削機ですが、実は細かい仕様の2次加工の殆どをこの機械で製作しています。

どの工場でもそうでしょうが、加工時のワークを支える冶具を工夫すれば、難易度の高い加工も可能です。

この冶具作成が実はブラックボックスになります。

もちろん、簡易な加工機で対応するのですから、そこには段取り替えや人の介入が多く入りますが、先ずは基本形の半完部品を射出成形で一定量、いち早く製作し準備しておくことで、顧客からの最終仕様が決定したら、即加工に掛かることが出来ます。加えて、余剰在庫も作らなくても済みます。

また、顧客からの仕様が決まる・決まらないとは関係なく、開発期間とのだぶりも可能です。
仮に設計が最終まで終了していなかったとしても、ここはもう変わらないという部分はあるはずです。そういった基本形の部分を金型製作に取り掛かってもよいのであれば、開発完了を待たずに進めてよいはずです。開発完了を見届けないとモノづくりに進めない、これではベンチャー企業のスピーデイーなものモノづくりは達成できません。
「金型成形+2次加工」というたかだか一つの手法ですが、既存概念にとらわれない手法を今後も探していきたいと思う工場メンバーです。

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