設計の現場の過酷な現実

56歳にもなるエンジニア兼社長ですがw
(社長兼エンジニアではありませんw)

ちょっと現実の設計の現場だな~と思う事がありましたので、ご紹介しようかと。
実は次女が東京へ就職するというので、3月24日AM5:00出発で、車で東京まで引っ越し荷物と共に自走してきました。
去年の全く同じ日には、長女が埼玉に就職して引っ越しがあり、私の軽トラで引越荷物とともに自走しましたw

そして、3月27日に東京をAM4:45に出発し、AM5:00に都市高速にのり、自走し帰ってきました。

出発前の22日には深夜まで掛かって、仕事を完了し手配を部下に任せてましたので、28日には会社に出勤して、ノンビリと業務の再開しようかと思っていたら、22日に完成していた筈の図面に部下から修正依頼が入りまして、帰福直後の28日はその修正をすべく、出勤と同時にフルスロットルで1日で修正を終えました。終わったのが22時過ぎていたと思います。
昼飯も晩飯も食べる暇がありませんでしたw

これで安心して、新製品の基板試作を待つのみです。
これでも大変です。

もともと引越しで会社を休みますので、元々は3月15日に完了し、まるまる翌週1週間分は引越準備をすべく余裕を持って可なり以前から準備していたつもりです。
ところがこれが想定通りには行かないもんでして、しっかり出発ギリギリまで設計業務が遅れてしまうわけです。

24歳で就職して依頼、家族と旅行や観光した記憶も有りません。これがエンジニアの現実です。
勿論、当時からプライベート重視なエンジニアも居ましたが、もう30歳過ぎた頃には管理職だとかいって、設計から離れるのが殆どです。
私は、この56歳になるまで1度も設計から離れたことはなく、現役で今でもやってます。

製品企画~回路企画~回路設計~基板設計までやります。
なかなか、この歳でやっている人は少ないと思いますw

更には、24年9月に新製品を発表する予定でして(4月の新製品とは異なります)、それは大規模回路な製品でして、23年末にはビシッと設計を終わらせています。
1200pinにもなる回路のモノでして、相当に大規模な回路です。
勿論、パソコンやスマートホンの設計には及びませんがw、機能や役割でいいますと、それ相当以上のモノ。
しかも、OSで動く製品ではなく、全てFirmwareで動かしますので、どの位複雑かは理解して頂けるかと。

23年末の段階の設計済み、試作手配待ちだったw基板の図面が下図です。
 

23年末には完成済みの設計(1200pin)

喫煙タイムのチョットした会話から、終わっていた筈の図面が振り出しにw

24年4月発表の新製品の最終修正は東京から帰福後の4月28日には済ませましたので、この9月発表予定の基板の簡単な修正をしようかと思ってました。
基板サイズが52mm x 52mmの所を、Ethernetコネクタの位置を変えようとしていただけなんです。
EthernetコネクタのRJ45コネクタを、機構チームの都合で別基板として、自由な位置に置ける様に変更しようというモノ。
簡単な筈です。

ところが、喫煙所で部下の機構チームのT君と話していたら、トンでも無いアイディアを言い出しますw
最初は、「そりゃ~ダメだろう~」と言ったモノの、1本タバコを吹かしながら、脳内でシミュレーションした所で、「ん??いや!それ良いアイディアかもしれんぞ!」とw
ここまでに10分少々w

で、2本目のタバコを吸い終えて、直ぐにCADを開きまして、ジックリその可能性を検討した所、『ダメ!』だと判明しました。
ここまでに2時間です。

そこで再び、煙草タイムです。

すると、更なる良いアイディアが浮かびました。T君は来客対応中で居ません。

そこで、機構構造設計と基板設計を再び脳内でユラユラとシミュレーションしてみたところ。。。

いけそうな予感が。

ここで、1200pinの殆ど完成していた筈の図面を弄り始めます。
「いけそうな予感がするな~~」
で、今度は23年末に折角描いた配線を消していきますw
そしてブロック単位に分割し、配置した部品類も全てバラバラにしますw

それが下図

1200pinもの基板には見えませんが、かなりズームアウトしてますので、小さな部品が見えてないだけです。
0603のパッシブ部品(0.6x0.3mmの抵抗やコンデンサ)をメインに使ってますので、ほぼCaptureでは見えなくなりますw

ココまでバラしてしまいましたw
この段階でも、機構構造と基板構造とを脳内でユラユラとシミュレーションしながら、あらゆる実現の可能性を測っています。

すると、主役の高機能モジュール(無線モジュールでは無いです)のサイズが新たな基板サイズに入るかどうかという最大の問題に直面します。
「こりゃ~参ったな~。。。想定している基板のサイズに入らないかもしれないな~。となるとこの検討は全て台無しだな~」
これで、最悪は本日の16時までの検討は全て無駄骨に終わります。

ところが、想定していた基板サイズと高機能モジュールのサイズがなんと「シンデレラ・フィット!」するじゃないですか!w
※シンデレラ・フィット:バチコン!と寸法が0.1mmもズレずにジャストサイズで入る事を言いますw 私の造語ですw

ここから、脳内モルヒネが出てきます!w
脳が一気にアクセル全開ですw ここから一気に検討が進み、息をするのも忘れるほどに集中します。

そして、まだこの段階ではありますが、95%は間違いなく成立するとの確証まで漕ぎ着けました。
まだ5%程の不確定性は残って居ますが、そこは「根性とアイディアで何とか出来る筈」というのが、よくある『95%行ける』との確証を得た瞬間です。

描画済みの1200pinもの大規模回路ですら、完全に100%白紙から、ゼロからやり直しですw

これ、なかなか辛いでしょw

オマケに機構キャビの構成も構想済みで、1つ大きな課題点・より良き構造案が閃いてましたが、担当のT君は打合せ中なんで、自力で進めます。
すると、これがまたシンデレラ・フィット!しましたw

1つの製品開発で、2度もシンデレラ・フィットするとはw 
「もう神様に導かれているのではないか!?」と思ってしまいましたw
ここで、更に脳内モルヒネが更に分泌され、集中力は更に上がります。
そして、色々と問題点や課題点を図面にする前に、脳内だけでシミュレーションを寸法と共に考えます。
製品企画もまた、脳内でガンガン進めます。

「ほぼ行けル!」と機構構造や企画面でも95%行けると確信が産まれます。

「よし!全部描き直しだ!! 改めてやり直すぞ!」
※23年末に描いた基板も相当の時間が掛かってますが、前向きなやり直しです。
※この回路と基板設計クラスだと、大手企業なら試作までに6ヶ月では済ませられないレベルです。

でも、「これが出来るエンジニアか?1度完成しているから触りたく無いエンジニアか?」って所が『エンジニア哲学』です。

ここが本物のエンジニアかどうかの分岐点なんです。

私はずっと前者側なんですよね。
後者な人も沢山見てきました。 なんだかんだ言って、折角使った時間とリソース優先です。合理的です。でも、ベストでは無いです。

私は、電気設計の『宮大工』を自称してますし、よりよい設計案があれば、徹底的に心配事や懸念点や可能性を全てシャブリ尽くして、最善最高の設計をしてこそのエンジニアだと思うんですよね。

「これ以上、改善する余地は一切無い!これが最善でベストである!使った時間が無駄になるなんて当たり前だ!」

これが設計エンジニアの『宮大工』のレベルです。私は32年間も続けています。

こういうもんです。
何度経験したか数えられない程に沢山経験しています。

 

優れたエンジニアに成るために必要な事

まぁ、私が最高のエンジニアだとは到底思いませんw
元々、芸術系大学卒でして、大学時代には電気の授業はありませんでしたw
大学1年の末に友人の薦めで始めた趣味の『電子工学』に没頭し、『オームの法則』なんてサッパリ分からない所からのスタートです。
高校時代も、物理が大嫌いでしたw

それが、言葉で「何をしたいか・何を作りたいか」を説明して頂ければ、その話の最中にはもう回路図は完成しています。
部品の品番まで付いてます。
最近は、もう基板設計も頭の中では話を聞いている内に描いてます。
ご要望の終わりには、基板サイズとアンテナの制約、そして機構設計のサイズ迄をご説明出来る程です。

電気設計の部下達もこの位は、皆出来る様に育ってます。

32年間もの間、一切手を抜かず、56歳になるまで続けて来た『能力』だと思っています。

管理職となろうが、関係ありません。
社長ですが、日々の業務の95%以上は今でも企画や設計を自分でやっています。

そして、未だそれは完成の域まで行っては居ないと思っています。

死ぬまで『設計』です。
そして、死ぬまで『精進・鍛錬』です。
終わる事は無いと思います。

これが出来る人でないと、『エンジニア』とは言えない商売なんです。
1つだけ『メリット』があります。

次から次へと、アイディアが浮かび、それを実現できるのです。
こんな、素晴らしい職業って無いと思いますが、皆さんはどう思われます?

『This is Engineer!』

なんです。
 

SNS SHARE