オススメの昇圧DCDCコンバーターが見当たらない
漸く、リチウムコイン電池1個(3.0v)で青色LEDを点灯させる内容に来ました。
長々とお付き合い頂き、申し訳ないですw でも大事な内容を解説してきましたので、ご勘弁ください。
さ~ってと、オススメで弊社が良く使ってる昇圧電源を紹介するぞ❗。。。と言うつもりだったのですがw
改めて、日清紡マイクロデバイス社のパラメトリック検索をしてみますと。。。
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/products/dc-dc-switching-regulator/introduction/
私の条件にあう、もっと新しいのを探してみますと。。。こんな感じになりました。
先ず最初に、私は商品電流:Iq(Iss)を真っ先にチェックします。
旧RICOH品番で絞込みして、Iqの少ない順に並べ替えしました。
良いのがありそうです。R1810は、0.6uAですので素晴らしそうです。
しかし、R1810は、『光発電素子1セルに特化した蓄電用昇圧DC/DCコンバータ』と言うことで対象外です。
所謂、エナジーハーベスト専用の昇圧DCDCコンバーターICです。
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/pdf/datasheet/r1810-ja.pdf
一度設計したことがあります。
EnergyHarvest用の電源は、通常の電源としては使用出来ません。Ioがもの凄く少ない前提のICだからです。
出力電流Ioは5mAとか出力出来ないので、対象外となります。
その次に少なそうなのが、R1210で、Iq=10uAです。んんん?なんか急に増えました。1uA程度のが無いみたいです。
R1210Nxx1とR1210Nxx2の2種類があるようです。違いはスイッチング周波数が100kHz/180kHzで分かれてます。
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/products/dc-dc-switching-regulator/spec/?product=r1210
ここで、私の2つ目の注目ポイントが『スイッチング周波数〔kHz〕』なんですが、嫌な予感がします。
100kHz/180kHzとは一昔前のスイッチング周波数としては普通なのですが、私は最新の設計を好みます。
私が良く使うDCDCスイッチング周波数は、最近では〔MHz〕なのです。
なぜ嫌な予感かと言いますと。
DCDCスイッチング電源はL(インダクタ)が必須です。このLはスイッチング周波数によって概ね比例します。
〔スイッチング周波数による、インダクタ値の相場観のイメージ〕
・100kHz:47~100uH
・180kHz:22~47uH
・1MHz:2.2~4.7uH
ざっと言うと、こんな感じの経験値があります。実際調べてみると、だいたいこんな感じです。
uHの大きいインダクタほど、より多くコイルを巻いています。
=uH値の大きいものは、Lのサイズが大きめになります。
=電流をより流したい場合はコイルの巻線の太さも太くなり、uH値が大きいと、更に大きくなります。
つまり、スイッチング周波数が低い(100kHz)と、自然と使用するL(インダクタ)が大型になるんです。
これはホントに嫌ですw
私は小型設計をしたいので、直径が大きく、更には高さも6mmとか8mmとかになると嫌なんですw
事実、
R1210Nxx1(100kHz):推奨L=100uH
R1210Nxx2(180kHz):推奨L=27uH
の様です。
おまけに、外付けのShottkey Diodeが必要の様です。内蔵されてません。これは私のモチベーションを下げますw
なんか嫌ですね~w
勿論、R1210Nxxにはそれに最適な負荷を想定されて設計されているので、特性が悪いのではありません。
ちゃんと、それに合致した用途と目的があります。
私の今回の目的には合わないというだけです。
次の候補を観ますと、
RP402になります。Iq=21uA、スイッチング周波数=1.2MHzです。仕様書を見ますと、L=2.2uHでグッドです。
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/pdf/datasheet/rp402-ja.pdf
ちょっと、Iq=21uAっていうのが気になりますが、青色LEDを点灯するためだったらイケそうです。
青色LED自体が5~10mA程流しますので、RP402の消費電流:21uAは無視できるとも言えます。
また、CEでOFFさせればIstanby=0.2uA(typ)に下がります。 ※Voが外部設定のものはもっと多い。
確かに、RP402でもイケそうではあります。
しかし、どうも。。。なんか今回の私の選択肢として、もうちょっと魅力が欲しい所です。。。
というのも、実は私が良く使っている昇圧DCDCコンバータが凄く使いやすいからなのです。
実際は、昇圧DCDCでは無く、昇降圧DCDCコンバーターなのです。
昇圧が必要なのに、昇降圧を選ぶとは何とも勿体ないというか、オーバースペックでは?
と思いがちですが、実は超オススメなんです。
ではそれを紹介します。
RP605x_昇降圧コンバーター
日清紡マイクロデバイス社 RP605x_昇降圧コンバーター
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/pdf/datasheet/rp605-ja.pdf
なのですが、もう兎に角オススメです。
面倒臭がりの私にとっては最高ですw
RP605x:昇降圧DCDCコンバーターを私がオススメする理由は以下。
〇リチウムコイン電池1個(2.4~3.0v)➡昇圧3.3vを取り出せる。
◎リチウムイオン電池(放電時:3.0~3.7v/充電時:4.2~4.3v)➡降圧3.3v~昇圧3.3vをシームレスに取り出せる❗
〇USB5v(5.0±0.25v)➡降圧3.3vを簡単に取り出せる。
如何ですか。得に◎の所です。最高です。
そして3つの電源どれにも対応していますので、「コレ1個を標準化すれば何でも使える❗」という面倒臭がりの私に最適です。
おまけに、”+BM(Battery Monitor)”まで付いているのは最高です。電池の元電圧を常時モニター出来ます。
※日清紡マイクロデバイスでは”BM”と呼びます。ABLIC社では”PM”と呼びますが同じ物です。
私のDCDCの超々オススメ品です。
特徴
以下がRP605x:昇降圧DCDCコンバーターの抜粋した特徴です。
◎消費電流:Typ. 0.3 μA➡上で紹介した昇圧DCDC:R1210Nxxよりも少ない❗
● 出力電流:300 mA➡LPWAまでカバー出来ます。
● 入力電圧範囲:1.8 V ~ 5.5 V
● 出力電圧範囲:1.6 V ~ 5.2 V
● 出力電圧精度:±1.5%
◎ 外付けL(インダクタ):2.2uH➡小型化が可能。
◎ スイッチングモード:VFM(Variable Frequency Modulation) ※他社ではPFMと呼びます。
◎ バッテリーモニター機能付き:Vin/3とVin/4は選択
文句なしの、完璧な仕様ですね。
◎スイッチングモードの解説
通常DCDC電源では、PWM(Pulse Width Modulation)が使われます。これは固定周波数のスイッチングで、DUTYのみを可変します。
これに対し、VFM(PFM)は、可変周波数のスイッチングでDUTY可変を行います。
先に、低負荷(低出力電流)領域での効率の話を書きましたが、これを解決するにはこのVFM(PFM)方式が不可欠なんです。
RP605xでは、最大出力電流300mA領域までもVFM動作をさせており、画期的です。要するに効率重視の設計と言うこと。
私は現状でこれ以上IoT機器で完璧なDCDC電源ICは無いんじゃないかと思います。
※例外w➡電源ICの変態的メーカーwのリニアテクノロジー社(部門)は別ですw ここは超電源ICメーカーと私は言ってますw
ここの電源IC設計は、もの凄いです。現状、他社の追随を許しませんw ただ、問題は『高価すぎる❗』点のみwww
性能は最強で、他社には無い痒い所に手が届いた”もの凄い電源IC”を持っています。 我ながら感心しますw
そう言うのを望まれている方は是非御検討下さい。弊社でも適材適所でリニテク品を使って居ます。
ただし、2017年にAnalogDevices社に買収されています。
https://www.analog.com/jp/index.html
日清紡マイクロデバイス社には、「この旧リニテク(リニアテクノロジー社)を越えて欲しいな~」と何時も言ってますw
行けそうな気もするんですよね。。。
解説(Quadceptプロジェクトファイル)
Quadceptプロジェクトファイル➡
https://drive.google.com/file/d/1OPsQwDFkKq-PkYmaLA9jeozGYQycRDKf/view?usp=share_link
今回より、PCBレイアウト例も付いてますので、参考にして下さい。
〔条件〕
層構成:4Layer(L2&L4はGND)➡仕様書では2層で紹介があります。
※当たり前ですが、特性を保証するものでは有りません。ただ、ちゃんと動く筈ですw
DCDC回路の設計時にまず悩むのがL(インダクタ)の選択です。
今回は、村田製作所のDEF2016シリーズを使います。RP605xでは2.2uHです。
https://www.murata.com/ja-jp/api/pdfdownloadapi?cate=cgInductors&partno=DFE201610P-2R2M%23
なんと2.0mm×1.6mm×T:1mm(max)
というサイズです。こんなのが選択出来るのも高スイッチング周波数仕様のお陰です。
使用するC(コンデンサ)は全てセラミックコンデンサ(MLCC)です。
タンタルコンデンサ・電解コンデンサ等は使わない様に❗
その他
仕様書の見方なんですが、単純に仕様書の波形だけを観て、脊髄反射的に騒いでしまうエンジニアwも居ますので、解説の追記をします。
DCDC昇降圧の効率特性(左図)を観ますと、Io:1uA~300mAに渡り良好です。
1uA時の効率で、Vin5.5v時の降圧やVin1.8v時の昇圧では、効率がかなり下がってますのでこの点は用途に応じて判断。
Vin1.8v時のIo:10mAや100mA時の効率が低いです。しかし、昇圧の効率は降圧よりもかなり低いのでこんなもんです。
負荷過渡応答特性について(右図)を観ます。
0.01mA(=10uA)↔100mAの所謂バーストモード負荷での応答特性とも言えます。
10uA➡100mAへの過渡応答時:+30mV(=0.03v)~-100mV(=0.1v)のピークが見えます。
ここだけハイライト・ズームして過渡応答特性を、過度に過渡応答してしまうエンジニアはダメですw
MCU(マイコン)はデジタルで動作するICですので、0.1v位のドロップで騒ぐ事は一切有りません。
なんも影響は無いでしょう。
但し❗ADC機能を使われる場合は注意です。この瞬間に測定をしたら若干狂いが出ます。
ADC読み取り精度を重視される場合は、DCDC出力電圧に更に、リップル特性の良いLDOを追加したりします。
※ADC読み取りの場合は、必ず『移動平均』を取ります。私はLDO無しで、ADC読み取りする事は多々あります。
また、無線モジュール側にも影響が有りそうですね。
しかし、昨今のDigital無線通信のICには内部LDOが必ず付いてますので、0.1v位のリップルは全く気にしなくても大丈夫でしょう。
一応、無線モジュールに内蔵されている無線チップのブロックダイアグラムは確認しておくべきです。
安定化回路(内蔵LDO/内蔵降圧DCDC)が付いてるはずです。だいたい最近のRF部はIC内部で安定化された1.2v付近で動作するように設計されてます。
次も、エンジニアが過度に過渡応答wしてしまうネタです。
リップル特性ですが、これも騒ぐ程の揺らぎではありません。充分ですね。
そもそも、揺らがないDCDCスイッチング出力電圧なんか有りませんからw
特性を見極めて、充分かどうかを判断できるエンジニアでありましょう。
2002年に独立した時には、現在の様な設計ノウハウは保有してなかった私です。
実際の所、回路図CADや基板レイアウトCADも白紙状態から描く経験も有りませんでした。
ましてや、回路図シンボルや部品のフットプリントなんかは、旧職では専門の部門に女性が居て、作成して貰っていました。
その技術補助の女性がある程度、ザックリと書き始めた後に、横に座って0.1mm単位の修正指示をしていただけです。
独立後は、まずCADを使いこなすべく必死に独学で学んでいました。
国内の日本語対応のCADはバカ高くて到底買えません。海外のCADを捜索し、試し、必須の機能がなく断念の繰り返しでした。
そんな中、ドイツ発のTarget3001!というCADに行き着き、完全にマスターし、これで開発をしていました。
当時、Target3001!を最初に使いこなしたのは、日本では私だけの筈です。
「日本で代理店をしてみないか?」とドイツの社長から提案もされたもんですw
その後、資金的に投資ができる程になり、日本製のCADに切り替えました。敢えて名前は書きません。
1ライセンス200万位したと思います。これを3ライセンス購入し、私が先行して導入を試みました。
所がこのCADのクソッぷりが最強だったんですよw
もう、文句を言ったら切りが無いです。メーカーともワリと仲良くやってたのですが、仕様の糞ッぷりは最強で、何度もクレーム。
何から何までダメなんです。もう、ほんと酒席で語り始めたら、10時間以上喋れますw
結局、9ヶ月間の導入検討(終わったら、私が社員向けにマニュアルを作成する計画)の後に、『断念』を決断。
この間、私の新規開発も全て止めてましたので、損失は購入金額どころでは無かったです。
600万円と私の時間と新規開発の損失です。
未だに、思い出すと腹が立ちます。
この『断念』を決断したのは、Quadceptという大坂発のCADがあるという情報でした。
取り敢えず、フリー版をDLして触ってみたところ、信じられないくらい使い勝手が良いんです。
1ヶ月程度で、ほぼ全てをマスターし、従業員向けのマニュアルも作成し、全員移行する事にしました。
今のBraveridgeがあるのは当に、Quadceptのお陰です。
是非皆さんにも使って欲しいと思います。これホントに最高です。
大手の電子機器メーカーでは、図研社のCRシリーズが使われています。
しかし、これ1ライセンスが数千万円で、年間メンテナンス費用だけでも@100万円は下らないでしょう。
私の部下達はこのCRを旧職で使って居たそうですが、Quadcpetはそれに劣りません。
是非、Quadceptを沢山の人に使ってほしいもんです。