さて、未だ始まったばかりの無線設計道場の2回目ですが、もういきなり、《アンテナ理論の公式》に突っ走ります。
大丈夫です。簡単ですので。
アンテナには最適長があるとは、ご存知の方も居られると思います。
その最適長とはどうやって決めているのかというと、公式があるんです。
文系の人でも覚えられます。
無線で使われる周波数は幾つかあります。色々あります。
良く知られているのは、順番に言いますと
2.4GHz/5GHzですね。WiFiで使われてますので、良く知られてます。
後は、920MHz(サブギガ帯)とかいうのがLPWAで使われています。
他にも色々ありまして、アマチュア無線なんかで使う周波数帯もありますが、ここでは割愛します。
2.4GHzとは、1秒間に2,400,000,000回も正弦波(Sin波)振動する信号と考えて良いです。
因みに、〔,カンマ〕は1000単位でつきまして、1の位から、〔G(ギガ)〕,〔M(メガ)〕,〔k(キロ)〕の所に付いてます。
k(キロ)×k(キロ)=M(メガ)
k(キロ)×k(キロ)×k(キロ)=M(メガ)×k(キロ)=G(ギガ)
次はT(テラ)ですが面倒なので書きませんw
携帯のデータ通信で家族が言う「ギガが足りないのGBのGもこの”ギガ”」ですw
ちょっと本題に戻ります。
2.4GHzというと直ぐに【無線の電波】と思ってしまう人が多いほど、WiFiの2.4GHzは有名になってしまってます。
しかし、実際は2.4GHzが物理的に振動する信号であり、”=無線”というワケではありません。
単なる振動する信号です。机を一秒間に2400万回/sで振動させられれば、それも2.4GHzの振動と言うことです。
振動や振動信号といってもイメージが湧かないと思いますが、ここでは電気的に振動という事に成ります。
配線上に3.3vの電圧が掛かっていて、これを2400万回/秒でON(3.3v)/OFF(GND)したら、2.4GHzの電気信号となります。
矩形波でも2.4GHzの電気振動と呼び、信号にも成り得ます。
ちょっと要らぬ事も書いてみますと、上の条件で、3.3vをON/OFF制御している側が《出力》で、それを見ている側が《入力》です。
結論からいうと、有線の2.4GHzの信号もあります。無線の2.4GHzはアノWiFiの無線の2.4GHzです。
何が違うのか?って事なんですが、
まず、2.4GHzの有線信号が基本として理解します。
そして、2.4GHzもの高速有線信号通信になりますと、直ぐに電波として配線から飛び出し易くなってしまうんです。
高い周波数ほど、電波として飛び出し易くなります。飛び出したのが電波であり無線なのです。
パソコンのMPU(CPU)~DDRRAMメモリー間の通信なんかもう2.4GHz以上ではないでしょうか?
その2.4GHzで通信すると簡単に飛び出してしまって、電波として飛び出ます。
【有線と無線の設計の違い】
・2.4GHz高速有線通信:電波が飛び出さない様に気を使った設計
・2.4GHz無線通信:2.4GHzの信号が漏れなくぜ~んぶ飛び出す様に気を使った設計。
コレだけの違いです。
我々無線屋たちからすると前者の飛び出さない様に有線2.4GHzインターフェースの設計する方が超難しいですw
ここは、無線設計道場ですから、飛び出し易い設計を案内します。
配線から電波が飛び出し易い条件というのが、まさにアンテナ理論の公式なんです。
アンテナ理論の公式として覚えておいた方が良いのはコレだけです。
ちょっと試しに計算してみましょう。
2.4GHzの波長λ[mm]=300,000[km/s]/2400[MHz]=125[mm]=12.5[cm]
920MHzの波長λ[mm]=300,000[km/s]/920[MHz]=326[mm]=32.6[cm]
こんな感じで簡単に計算出来ます。
波長の単位は上手いこと[mm]で出るように公式を弄ってますので安心してください。
これに加えて、アンテナ理論として覚えておいた方がよい理論(知識)があります。以下の図。
黄土色・茶色は、導線のイメージで使用しています。
使用する無線の周波数を公式に代入すれば、1周期の波長(mm)が計算出来ます。
1波長は青線で、まさにSin波の一周分です。この長さを計算でだすとそれがλ(mm)に成ります。
※光の速度=電波の速度=300,000[km/s] ※1秒間に進む光(電波)の速度です。30万[km/s]です。
分かりやすく言うと、私の小学校時代の話だと「UFOは光速で飛行するらしく、地球7.5周する」そうですよねw
光の速度:30万[km/s]のイメージとは、1秒間に地球を7.5周するほどの速度ですw これワリとイメージ掴めますw
この波長λの半分を『2分のλ(ラムダ)』と呼びます。
この状況は、当に『半波長』です。この状況は、長縄跳びと同じです。1波長の上下する様には縄跳びは回せませんよね。
『半波長』が当に、共振する周波数条件となります。共振は、楽器のチューニングで使う『音叉現象』です。
音叉(指定の周波数の音がでる)を鳴らす➡「近くの静状体の音叉も”共振”して鳴り出す」のが共振です。
「その周波数fに対するインピーダンスが最も低い状態」とかいうと分かる人も居るでしょう。
長縄跳びも、回す2人の距離で、一意に『半波長』で回るしかないですよね。2山とか3山とか無理です。
2人の間の距離ラムダ(m)で、共振する周波数が決まりますので、計算で周波数を出すことも可能ですよね。
長過ぎると地面に当たりますが、無ければ長縄跳びの振幅(大きさ)が変わるだけです。周波数は2人の間の距離λで決まる。
世の中の所謂アンテナというのは、その又半分の『4分のλ(ラムダ)長』という言葉が使われます。
アンテナ技術では一般用語です。
アンテナ内蔵モジュールを観察しますと、アンテナが確認できると思います。
実際に、2.4GHzの『4分のλ長』を計算してみますと、
λ(2.4GHz)[mm]=300,000[km/s]/2400[MHz]=125mm=12.5cm⬅1波長の長さ
λ(2.4GHz)/4=3.125[cm]
と言うことは、アンテナ内蔵モジュールのアンテナ長は3.125[cm]に成ります。
こんな感じの計算をしますので、iPhoneの計算器アプリでも計算できる超絶簡単な『公式』ですね。
しかし、上図では変な事を書いています。
実際は、『λ(2.4GHz)/4のアンテナ』ともう一つの『λ(2.4GHz)/4』を合わせて、《アンテナ》だと。
もう一つの青い方の『λ(2.4GHz)/4』は何かというと《GND》です。
この2つの『λ(2.4GHz)/4』を2つ準備して、その中間に交流源を置いてます。これが発信源です。
発信源とはICの送信電波の出力源と思って下さい。
この状態こそが、『アンテナ理論の原点:ダイポールアンテナ構成』なのです。
基本、世の中の全てのアンテナの原点は『ダイポールアンテナ』が基本です。
変形したアンテナも観たことがあると思いますが、この『基本ダイポール(アンテナ)』と比較してどうなの?という考えをします。
※変形したアンテナというのは、アンテナ理論の変態の様な天才の人しか作れないんです。本物の天才❗
普通の人には無理な理論ですので、チャレンジしても無理です。その位の超超超難しい世界です。私も分かりません。
ここまでを理解すれば、アンテナ理論は完璧です❗
ここまでの内容は、ググっても出てこないでしょう。
では、これを実際に「無線機器を開発する際にどう活用するのか?」のフェーズへ移行しましょう。
そもそも「もう一つの『4分のλ』がGNDって何?どれ?どこ?」ってのも有りますね~。
アンテナ理論に基づき、皆さんが大好きな『アンテナ付RF無線モジュール』を作ってみましょう。
中程に書いたのが、アンテナ理論に基づいて作ったものです。
アンテナ側の『4分のλ』が3.125cm程あり、ICチップやその他部品があるので、全長は5cm位になる筈ですね。
所が、実際販売されている『アンテナ付きRF無線モジュール』のサイズ感は2cm長位が殆どです。
これは、『アンテナの畳み込み』という手法を使って、折り畳んでいるんです。良く考えてますね~感心です。
これを「どの位小型化するのか?されているのか?」って所で、モジュールのサイズの大小が決まります。
単純に、3.125cmを畳み込む(折り込む)だけでは上手く行かないので、そういう場合には『チップアンテナ』が採用されます。
如何です?アンテナ付きRF無線モジュールってこう言う風に設計・開発されているのです。
ただ、一つ言っておかねば成らない事が在ります。
アンテナを畳み込み(折り込み)しすぎると、段々飛ばなくなっていきますので要注意です。
世の中、そう甘い世界では有りませんのは自明ですからね。そう言うもんですw
以前、中国製のモジュールを見せられて、ちょっとヤバいんじゃ無いか?と思う程に折り畳んだRFモジュールを観たことがあります。
それは、チップアンテナ版でしたが、シールドケースとチップアンテナ間の距離が1mm程しか空いてないのです。
チップアンテナ~シールドケース間がそんなに近いと、確かに超小型化は達成できます。
しかし実際には放出された電波が、GNDでもあるシールドケースに引き込まれてしまい、殆ど飛ばないって結末になります。
ここら辺も要注意です。
一旦終わったかのような閉め方ですがw
チョットマッテ下さい。《もう一つの『4分のλ:GND』》はどうなったんでしょうか?忘れてはいけません。
ではその解説を。
皆さん、ご安心ください。
《もう一つの『4分のλ:GND』》の確保は、RFモジュールの長さが2cm程度でも、それを実装するメイン基板で確保するのです。
RFモジュールを使って、基板設計をする際には、必ず《もう一つの『4分のλ:GND』を儲ければ良いのです。
アンテナ付RF無線モジュール+実装基板で《もう一つの『4分のλ:GND』》を作れば、ちゃんとアンテナになるのです❗
以上❗❗
「む・む・む❓❓❓ ん~~~~~~~❓」
と思った方が居られる筈ですよね~~~w
「500円玉サイズのBeacon❗」とかいうキャッチフレーズを聴いたことありますよね~。
500円玉の直径は、26.5mmです。 しかも角形基板じゃなく、丸型基板ですw
私は、上図の資料に、最低でも基板長は全部で40mm(=4cm)は必要だ❗と結論を書いてます。理論上の結論です。
しかも。。。ケースに入って合わせて500円玉サイズとなると、内部の基板はどう考えても直径22.5~23.5mmの円形の筈です。
このサイズ感は、リチウムコイン電池のCR2032(直径20mm/厚さ3.2mm)を使用するのが起源なんです。
「一体どうなってるの? アンテナ理論を満たせないじゃないか!」となります。
結論を言いますと、思った通りで、 「全くアンテナ理論を無視した設計」です❗❗
より、砕けて言いますと、「アンテナの筈のモノがアンテナになっていない❗」んです。
と言うことは、要するに、「全然飛ばない❗」って事なんです。
「Bluetooth LEは、5m~10mしか飛ばない」という嘘話の根拠は概ねコレが原因です。
こんなの使います?
おまけにもっと問題があるんです。
CR2032サイズで小型化をしてますので、図中の本来の『アンテナの4分のλ』部分が、コイン電池の本体に近すぎるんです。
恐らく、アンテナ部~CR2032のケース間の距離は2mm位しか取れません。ケース部はGNDですのでシールドにもなります。
こんな設計のモノで、量産化するなんて狂気の沙汰ですね。
そして、「Bluetooth LEはローエナジーだから、5~10m程度しか飛ばないのが本当の実力です」
な~んて嘘・偽りを、平気で言う無線エンジニアが多いんです。
Bluetooth Low Energy規格 にとっては、はた迷惑な話ですよね。
私が出会った方の中には、
「弊社の企画では、5m程度の距離で検出できれば良いので、アンテナ設計がダメでも大丈夫なんですよ!」と言った方も複数居られます。
アンテナの分かる弊社エンジニアの意見は、
BT4.2ならば、最適設計にすれば150~200m程度は飛びます。それが5m程度しか飛ばない状況というのは、アンテナがアンテナじゃなくなってる状態。このような状況では、Beaconから放射される無線電波の《放射パターン》はグチャグチャになっていて、安定な特性を出せる状況では全く無いんです。
これは、量産するとその無線特性のバラツキは異常な状態になります。
これは、製品毎に全く特性が異なるだけでなく、ロットによっては突然1mしか飛ばなくなる事態も発生します。その位危険な状態ということ。
障害物のある環境では、その実際の電波の放射特性は想像も付かない状況になります。
更に言えば、ホントに5mの通信距離でよいのならば、「アンテナを最適化し、放射パターンを理想的な状態に近づけ、送信パワーを下げて、5m程度に合わせ込めば、消費電流も下げられ、電池寿命も延ばせます」って事なんです。
如何でしたでしょうか?
アンテナ理論を正しく理解し、応用するのはとても大事な事なんです。
弊社では、500円玉サイズに近いBeaconも開発しています。
キーホルダーBeacon
https://www.braveridge.com/product/archives/43
このキーホルダーBeaconは150m程度飛びます。
これの開発には、非常に特殊なアンテナを考察し、試験し開発に成功しました。
ここら辺のノウハウは、私でも無理で、弊社のエース級が試作を繰り返して作り上げたBeacon自信作です。
ここら辺は、簡単に伝えられる程の技術ではありませんので、ちょっと説明不能だと思って下さい。
今回はふざけた話ではなく、真面目な理論の話です。
こう言う疑問を持たれた方も居られる筈です。
[4分のλ:アンテナ』+『4分のλ:GND』の2つを使って、『2分のλ長のダイポールアンテナ』を構成しているというのが理論です。
では、『2分のλ:アンテナ』+『2分のλ:GND』でダイポールアンテナを構成したらどうなるのか?という疑問です。
結論からしますと、最初のアンテナ理論の知識で説明した、青線(左半分が実線で、右半分が点線)を観て下さい。
左側と右側でお互いに反転した、半波長の信号源が出来てしまいますよね。しかも共振しています。
これだと、『正の電波』と『負の電波』が近傍で送出されようという状況になってしまい、お互いを相殺してしまうんです。
つまり、共振はしているものの、電波としては上手く効率的に放射されなくなるって状況なんです。
だから、アンテナは『4分のλ:アンテナ』+『4分のλ:GND』によるダイポールアンテナ構成じゃないとダメなんです。
如何でしたでしょうか?
多分、理系・文系問わず、なんとなく理解して頂けたかと思います。
しかし、これを知って居れば、中華製のBluetooth製品や、その他LPWAの製品の基板を観るだけで、ちゃんと設計されているかどうかを判断することも容易になります。
変な設計を掴まされ、「そういうもんだ!そういう実力が普通だ!」と欺されないためにも、この位は覚えておいた方が良いと思います。
ホントに世の中の全てのアンテナ理論の原点はこの内容で全てなんです。
全ては『ダイポール・アンテナ構成』が基本であり、基準です。
所が、世の中には変態チックなアンテナエンジニアってのが居られます。
例えば、AppleWatchのアンテナなんか、もう変態を通り超しているレベルです。
あんなのは、弊社では絶対に作れません。
非常にレベルの高いアンテナ理論を元に、超高価格なシミュレーターでシミュレーションをやって、漸く完成するレベルのもんです。
世の中には、そういうアンテナを発想・発案できる凄まじいレベルのエンジニアが居られるんですよ~。神です、神❗
私は到底及びません。。。
それと、再三書きますが、
「チップアンテナは飛ばない❗」ってのは全くの嘘ッパチですからw
誰なんですかね~こんな嘘・偽りを流布してるエンジニアさんは~w
そんな事言ってたら『嘘付くな❗』と叱責してくださいねw