電子回路設計(初級編)④ トランジスタを学ぶ(その2)です。
前回の続きです。
今回は本格的に回路を完成させていきます。前回の残課題はC(コレクタ)端子がホッタラカシに成っていました。
いよいよ繋いでみます。

ここを乗り切れるかどうかがトランジスタを理解する肝になります。
私も独学で学んでいる時に、ここで苦労しました。独特の『考え方の流れ』があるのです。
一度で理解するのは難しいかもしれませんが、できる限りシンプルにしてみました。
電子回路を理解する勘所が満載です。
これを乗り越えると、電子回路を理解する為の最大の壁を突破できますので、何度も読み返して下さい。
頭の中で1ステップずつ、納得したことを積み重ねていくのがコツです。ササッと読んでも解りませんので。

では始めます。まずは、C(コレクタ)を繋ぐところからです。

V残(v)を吸収するために2種類の回路を提示していたと思います。
電子回路設計(初級編)③~トランジスタを学ぶ(その1)の中で埋め込んだ絵の内、④「NPNトランジスタ」の『初動』の絵です。
これをベースにC(コレクタ)を電源に繋いでみます。

言葉をシンプルにするために「B(ベース)~E(エミッタ)間に電流を流す」を「ベース電流を流す」とします。
そして、文字のフォントを小さくできませんので、IeとかIbとVbeとかで表現します。小文字を使って、以下は表現します。
絵中では、フォントを小さくして表現してますので、同じ事だと思って下さい。

【先ず、右側の(図⑦R)は即座にアウトな回路になります。その流れを解説します。】
①ベース電流を流すとトランジスタがONします。
②ONするとVbe=0.7vに成ります。
③電源V=5.0vですので、V残(v)=4.3vに成ります。※R4の値は、流したい電流値にする事ができます。
④Ic(コレクタ電流)が流れます。ドバッと流れようとします。
⑤C~E間の抵抗値≒0Ωになります。 ※ONするとCがEにくっつく。ドバッと流れようとします。
⑥Ie=Ib+Icでエミッタ電流が流れます。 ※ドバッと流れようとします。IbはIcよりもかなり少ないです。

ここで、このCがEにくっついて、C~E間の抵抗値≒0オームとなる回路をよく眺めます。
すると、この状態は、電源の5vにが配線と0Ωの抵抗で繋がる事になります。これを『ショート回路(状態)』と言います。
ショートがダメなのは、だいたいイメージで分かると思いますが、実際に何が起こるかというと、
・単三電池(1.5v)で配線を使って+/-間をショートすると、大電流が流れて、配線は発熱・赤熱し火傷します。
・電源5vをショートさせると、恐らく配線が赤熱して溶けて切れます。USBの電源を使うと、回路が遮断されます。
結果的に言いますと、この回路では、トランジスタが赤熱して壊れる事になります。

理由は、オームの法則で計算してみますと、5vの電源に0Ω抵抗で繋ぐ(『終端する』と言います)ので、
I=V/R=5.0/0=∞(A)になります。
流れる電流値=∞(A)ですから、当然大電流です。だから赤熱したり破壊するのです。
※電熱線の実験が中高生の時にありましたよね。あれでも電熱線は低い数Ωの抵抗値を持ったスプリング状の線なのです。
 あれでも0Ωでは無いのです。数Ωです。とても低い抵抗値なので大電流が流れて、赤熱してヤカンを湧かせるわけです。

なので、この(図⑦R)はダメです。NGです。水を湧かそうとしているわけでは有りませんのでw

【では次に、左側の回路を見ます】
ベース電流を流して、C~E間の抵抗値が0Ωになっても、エミッタ側に付加したR3があるので、電源5vはR3が繋がっています。
ですから、(外回りの)回路に流れる電流値=Ic=5.0/R3 ですのでR3を決めると『求める電流値』が流れます。
先に解説した(図⑦R)よりかは安全そうで、成り立ってるように見えますね。
なので、この左側の回路(図⑦L)はOKそうです!。。。。。。。。。一見は!!!!!!!w

実は、この回路が一見OKそうなのですが、成り立ってないんです。
この成り立たない理由を、コレから説明します。
この『ダメな理由と根拠を学ぶ』事がトランジスタ回路を正しく理解する為にとても重要になります。
《巧く行く事を学ぶのではなく、巧く行かない事を学べば、巧く行く事を学べる》という流れで重要です。
では行きます。

①ベース電流を流します。
②B~E間の電圧はVf=0.7vに成ります。NPNなので当然、B(ベース)側がE(エミッタ)側より0.7v電圧が高いです。
③すると、E(エミッタ)電圧は5.0v-0.7v=4.3vに成ります。所謂V残(v)=4.3vです。これがR3で電流制限(決定)されます。
☆ここまでは、発光ダイオードの理屈と同じ
④トランジスタがONしますので、Ic(コレクタ)電流が流れます。
⑤トランジスタがONしますので、C~E間の抵抗値は0Ωになります。CがEにくっつきます。
⑥E側に流れ出るエミッタ電流Ie=Ib+Icの合計電流となります。
ここまでは大丈夫の筈。
   ↓※コレからです!
一見巧く行ってるようなのですが、辻褄が合わない状態に成っているのです。コレをジックリ行きます。

   〔◎ちょっと捕捉〕
   《オームの法則:V=R・I》って、違った解釈もできるんです。これは、ちょっと高級な考えです。
    ➡「抵抗に電流が流れたら、電圧が発生する」:確かにそうだと思いませんか!?
     (電圧なんか無視していて)兎に角、Rに電流Iを流したら、確かにR・I=Vで電圧が発生します。そう言う式でもあります。
     あまり杓子定規に電圧を中心に考えず、一部の箇所(ポイント)に注目し、Rに電流Iが流れると、電圧が発生する。
     こう言う部分的なブツ切りな、考え方も重要です。こういう考え方が以下では必要になります。

・R3の抵抗値は『流したい電流値』を③でベース電流だけを考慮して導きました。
 しかし、トランジスタがONするとR3には余計なIc(A)がドバッと流れ込んでます。
 これはR3の抵抗値を決めた時には想定されていません・想定していませんでした。
 しかも、Icは「ドバッと流れる」との事でした。ベース電流値:Ibは、Icに比べると、少電流ですよね。
 するとR3の抵抗値を決めた前提が変わります。小電流でR3を計算してたのに、そのR3に大電流:Icが流れます。
 R3に想定以上の電流が流れるので当然、R3で発生する電圧は増大します。※上述の〔◎補足解説〕
 つまりVe(v)は上昇すると言うことです。

・そして、トランジスタがONするとCがEにくっつきます。C~E間の抵抗値:Rce≒0Ωでした。
 となると、CE間に電圧は発生しません。何故ならVce間(v)=Ic×Rce=Ic×0(Ω)=0vですよね。※上述の〔◎補足解説〕
 すると、R3の上側(E端子そのもの)は、ONしているとC➡=Eと、くっつきますから。Ve=Vcです。
 するとR3の上側:Ve=Vc=5.0v(C端子がE端子にくっついている)に成りますよね。 ※☆

 一見問題無さそうに見えますが。。。。!

 トランジスタをONするにはベース電流を流しましたよね。流れているからONです。
 ONすると当然、Icが流れているわけで、勿論それは当然ベース電流は流れている筈。でないとONじゃない。
 すると、当然、B(ベース)の電圧は、E(エミッタ)よりも0.7v高い筈です。そうでしたよね。
 所が、の所に戻ってください。R3の上側:Ve=Vc=5.0v(C端子がE端子にくっついている)でした。

 と言うことは、B(ベース)はEよりも0.7v高い筈ですから、Vb=5.7vでなければなりません。でないとベース電流が流れません。
 所が、元々電源V=5.0vです。5.7vになんか成らないですw 電源は5vと決めましたよね。《固定》ですよね。
 電圧は《固定で不変》だと。ましてや、簡単に電圧が大きくなる事など無いです。
 電子回路は、最初に決めた電圧の範囲内でしか動きません。これが基本です。
 何かオカシイですよねw

如何です?トンチンカンに成って、頭が混乱してきませんか?

結論から言うと、この回路は
『辻褄が合わなく成る回路』
なのです。トランジスタを理解する際には、この《巧く行かない現実》を、流れとして理解(納得)することが最重要です。
巧く行かない事を、論理的に理解する事です。1回では理解出来ないかも知れません。
しかし反復し《巧く行かない論理》を理解・納得できるように頑張ってください。
ここを完全に納得できれば、トランジスタ回路は完全に理解できる土台が出来上がります。超重要なのです。

この(図⑦L)が、『トランジスタ回路として絶対に成り立たない理由と根拠』を繰り返し反復して理解し納得するまで繰り返す。

では、一体正しい回路は?という事に成りますが、答えは次の絵になります。
《巧く行かない回路を論理的に理解し、次に巧く行く回路を論理的に理解する》という流れです。

実は、一見『即NG』と思われた、(図⑦R)の回路に1つのRを追加するだけで全てが解決するのです。
この絵では、R5になります。コレクタ側と電源の間にR5を追加するのです。

では解説して行きます。

この回路の筋(スジ)が良い所が、幾つもあります。
・E(エミッタ)側に抵抗が無い。これはVe=0vと言うことです。電源のマイナス側=0vです。基準としてGNDとも言います。
・E側に抵抗がないので、トランジスタがONしてIe(=Ib+Ic)が流れても、Ve=0vで絶対に変わらない。コレは良いですね。
・ベース電流を流したら必ず、Vb=0.7vになる(Vbeは当然0.7vですが、Bの電位:Veも0.7v)。
  トランジスタがONしてコレクタ電流が流れてもVb=0.7vで固定です。コレは良い。
・ベース電流を決定するR3が、IcやIeの影響を全く受けない。IcやIeがR3を流れません。

如何でしょうか?これは納得行きますよね。
凄く筋が良いです。個別の事情に合わせて設計が可能で、その設計(抵抗値を決める事)が独立して計算できます。

問題は、『ショート状態』を回避すれば良いだけです。
それが、コレクタ側にR5を追加することです。

トランジスタがONし、C~E間の抵抗値≒0ΩになってVce間≒0vでも、R5を付加するだけで、巧くショートを回避できています。
しかも、この時、R5には電源Vがそのまま全部掛かります。

すると、こう言う考えもできます。
R5に掛かる電圧=V残on(V)=5.0vです。トランジスタがONした時にR5に掛かる残った残電圧という解釈です。
そのV残on(V)=5.0vをR5が全て受け持ちます。
すると、オームの法則で、
 Ic=5.0v/R5
で計算できます。

そして、発光ダイオードで学んだ『貴方(私)が流したい電流値』を決めれば、R5が決まるのと同じですね。
 この時はオームの法則を変形して、R5=5.0v/Ic(流したい電流値)でR5がすんなり計算で求められますよね。

如何ですか?
この時のR5を「コレクタ抵抗」と呼びます。コレクタ側に配した抵抗とう意味です。
因みに、ベース側に付いて居るR4を「ベース抵抗」と呼びます。ベース側に配した抵抗とう意味です。
参考までに、結局ダメ回路だった、(図⑦L)の問題抵抗wを「エミッタ抵抗」と呼びます。
 ※以後は、その様に記載していきます。

理論的なトランジスタの解説の基本は以上で終わりです。
ここまで理解できれば、NPNトランジスタは完全に理解した(の直前w)という事になります。

ほんとに、電子回路で一番の難関はココですので、何度も言いますが、何度も反復して『巧く行かない理由(理屈)』を納得してください。
スラスラスラ~っと納得しながら、『流れ』を理解し、自分自身の頭の中に対して説明できる様になれば完璧です。
それを目指しましょう。

次回は、NPNトランジスタを実際に使ってみましょう。
目的は忘れてはいけません。
『プログラムでスイッチをON/OFFする』です。

プログラムでスイッチをON/OFFするためのハードウェア側の理解をして行きます。

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