さて、初級編とは言え、3回目にしていきなりトランジスタを学びます。
私は「実用性の無いテーマや技術は知らなくて良い派」です。使える技術を先に理解してしまえば、余り使わない回路は後から簡単に理解出来るからです。先ずは大雑把にだいたいのイメージを掴むのが最短の道と思います。

高校の物理の領域をいきなり越えますので、トランジスタの解説では、かなり丁寧に進めていきます。

ではトランジスタですが、前回の「初回編②〜発光ダイオードを光らせる〜」を拡張してトランジスタが理解できます。
発光ダイオードはVf=3.1として計算しました。旧型の発光ダイオードはVf=2.1vでした。
今回は、ドノーマルな汎用のダイオードを考えます。トランジスタにはこの汎用ダイオードが入っていると思って下さい。
表紙の通り、黒いパッケージに入ってますから発光しても意味無いですよねw

まず、入り口としてトランジスタは2種類あります。NPN型トランジスタとPNP型トランジスタです。
それぞれに使い勝手がありますが、一般的にはNPNトランジスタだけ覚えておけば良いです。
一応、前段ではNPNもPNPも解説しますが、PNP型トランジスタの一般的な使い方って、結構限られてますので、NPNトランジスタを理解した後に解説します。

ダイオードの理解を拡張して、トランジスタは理解できます。
ダイオードの端子の役割は、アノード/カソードでした。
そして、そのダイオードの(製造上・設計上の内部構造)としてP型半導体・N型半導体というのがありまして、それを接合(くっつけ)して一つのダイオードが出来ます。
アノードが(内部構造が)P型
カソードが(内部構造が)N型
となります。

そして、忘れてはいけないのが、「ダイオードは片方向のアノード➡カソードへ電流を流せる。カソード➡アノードへは電流は流れない」という事。
これは構造的には「P型➡N型にしか電流は流せない。逆は流れない」という事でも有ります。
『P・N(ピーエヌ)!』と覚えます。 これ大事です。


 

トランジスタの端子は
B:ベース
E:エミッタ
C:コレクタ
という3種のポートで構成されます。
そして内部構造としてはP型半導体とN型半導体をどの様にくっつけているか?でNPNとPNPが違います。
トランジスタはP型とN型をくっつけて(接合して)作った部品(デバイス)で、くっつけ方の違いでタイプ(NPN/PNP)が違うというイメージです。
改めて言いますけど、PNPは取り敢えず「そう言うのもある」程度でOKです。ダイオードがあるという認識程度で良いです。

そして、一般の教本で勉強する際に、却って難しく思えてしまう所を指摘しておきます。
先ず、「どれが入力で、どれが出力か?」という考えは忘れて下さい。
そう言う考え方は、現代の使い方では、取り敢えず大半の人には不要なんです。

上図をみますと、
左側:汎用ノーマルダイオード ※復習内容を書いてますので復習してください。
真ん中:NPN(型)トランジスタ ☆B➡E方向に矢印があり、これがダイオードです。P➡N方向でもあります。
右側:PNP(型)トランジスタ  ☆E➡B方向に矢印があり、これがダイオードです。P➡N方向でもあります。
※NPNは出ていく方向に矢印、PNPは入ってくる方向に矢印、とも言えます。実際、この違いなダケなんです。

 

上図はちょっと踏み込んでしまっていますが、なんとなく理解して頂ければOKです。
ここで重要なのは、先ずトランジスタに内蔵されているダイオードのVfです。
発光ダイオードの解説の中で記載してますが、ノーマルダイオードのVf=0.7vです。これが入ってます。
これは今後、トランジスタでは良く出てきますので、『トランジスタのVf=0.7v』は絶対です。固定で不変の定電圧です。

トランジスタは、電流を流さなければ何も始まりませんので、電流を先ず流さないと行けません。
これをトランジスタの『初動』と呼びます。『切っ掛け』という事です。
そして、その『初動』の後に起こる現象こそが『トランジスタの動作』という事なんですが、それは後述します。

NPNとPNPの違いは、『初動』電流の電流の流し方が違う(電圧の掛け方が違う)んだな!という位の理解でOKです。
 

ここから、PNPを一旦忘れます。NPNだけで進めます。

では、NPNトランジスタを動かす『切っ掛け』である、『初動』をさせてみましょう。
トランジスタにはPN構造のダイオードが入っていて、P➡Nへ電流が流れる。逆は流れない。
※ダイオードの時は、役割として「アノード➡カソード」でしたが、トランジスタでは初動は「ベース/エミッタ」の役割と言います。
 役割の名前が異なりますので混乱しがちですが、それほどハードルは高くないかと思います。

NPNでは、ベース➡エミッタ方向がP➡N方向です。そして、ココこそが(初動用の)ダイオードです。
最初の切っ掛けは、これに「電流を流してやる事」です。何か始めないと、何も始まりませんよね。それが『初動』です。

B~E間に在るダイオードはVf=0.7vなので、B(ベース)側hはE(エミッタ)よりも、0.7v以上電圧が高くすれば良い筈です。
これは、発光ダイオードの時と全く同じです。
B➡Eに電流をながしてやると『V(B~E間)が必ず0.7vの固定で不変の低電圧』になります。
電流は高い方から低い方に流れ、流れたらVf=0.7vの固定になるので、B側が最低でもE側よりも≧0.7v高くないと電流は流れませんよね。
そして、0.7vを越える電圧がV残(v)でしたね。
ここは大丈夫でしょう。

そして、これもまた発光ダイオードの時と同じく『電流制限(決定)抵抗』を直列に付加する事で、V残(v)を抵抗で電流値を決めれば、B➡E間に流れる電流値を自分で決定する事ができた筈です。
この『電流制限(決定)抵抗』のお陰で、(大元の電源:)電源電圧V(v)の決定はV(BE間)=Vf=0.7vという自然界の掟に従っておいて、抵抗でV残(v)を吸収させますから、V(v)はラフに決定できます。
神様が「電圧高すぎるよ!」と思っても、別に電圧下げずに「抵抗値を変えて、『流したい電流値』を自在に変えられます」からラフです。
ラフなので、USBの電源電圧の5vにしましょうか。そんな感じで今のところOKです。

このイメージがトランジスタでも同じという事です。ではどこに抵抗を付けるかが、下図になります。

上図の様に、電流制限(決定)抵抗の付け方は2種類考えられます。
基本的に、『初動』させるという目的では、どちらでも正解です。
発光ダイオードの点灯回路と同じで有ることを確認して下さい。
また、抵抗とダイオードの上下の位置は、今のところ、どちらでもOKです。

ここでは、私はV=5.0としました。Vf=0.7vですから、V≧0.7vです。V残(v)=4.3vですね。これも発光ダイオードの解説と同じです。
電流制限(決定)抵抗で電流値を自由に決めたいので、大き目で5vとしました。別に9vでも12vでも構いません。
ここまで来ると、V残(v)を大きめに残していた方が、抵抗値の選択が楽だというイメージは分かりますでしょうか?
V残(v)が0.5vとかになると、抵抗値が凄く小さくなり、選択肢が少なく・手持ちも無いので使い難いと言うことです。
※あまり、小さい抵抗値は使う機会が少ないんです。前にも書きましたが1.0kΩ~10kΩ辺りが一番使います。

結局ここでも、『貴方(私)が流したい電流値』という考え方は最も重要ですので、V残(v)が大きい方が人間様に選択の余裕が有るわけですw

ここまで来て、なんですがw

『そもそも、何故トランジスタが必要なのか?』という疑問が出てきた方も居るかと思いますw

これは色んな使い方があるんですが、現代の実用性に絞って言い切ってしまえば、『電子スイッチ』です!

「なんでそんなもんが要るんか?要らん!」という人も、是非理解してみてください。凄く便利な場面が多いです。
 

上図を見て下さい。

右側に、4種のスイッチの写真を載せてますが、見た事はあると思います。
コレ全部、人間様が手を動かす事でON/OFFする『メカニカル(機構)スイッチ』です。
プッシュON/OFFスイッチ・トグルスイッチ・タクトスイッチ・電源スイッチ・etc etc色々あります。
内部構造としては、2つの端子が接触したらON、離れていればOFFです。
構造的にイメージ出来ないと、これから先は意味が無いのでこれは理解できるという前提です。

ON/OFFをプッシュでやるか、シーソー状の金属棒(やプラスティック部品)を倒してON/OFFするか、という感じです。
左端のは、プッシュしたらそこで保持して、もう一回押したら、リリースして戻り保持する様なスイッチの筈です。
色んなスイッチがあります。

こう言うのを、プログラム(ソースコード)を使って、ON/OFFが出来れば、発光ダイオードを1秒毎に点滅とかも出来ますよね。
この様な事を色々する際にこのプログラムを使ってON/OFFできると色んな事ができるわけです。

では、先程『初動』は分かりました。それをするとどうなるのか?です。
B➡E間に電流を流すと、それにつられてC➡E間にドバッと電流が流れます。これがトランジスタの動作そのものです。

ここでも少し踏み込んでみます。
『ドバッと流れる』と『流れない』という2つの状態を考えます。
メカニカル(機構)スイッチはONすると電流が流れます。OFFすると電流が流れません。
如何でしょうか?ソレっぽいですよね。

『ドバッと流れる』イメージは、現状ではあまり直感的では無いかもしれません。違う表現をしてみましょう。
※ドバッと電流が流れるイメージについては、(その②)で理解できると思いますので、解説を変えましょう。

より直感的に言うと、C(コレクタ)端子がE(エミッタ)端子に内部的にくっつくか・離れるかというイメージです。
こちらの説明の方が、スイッチっぽく見えると思います。

B➡E間に電流を流すと、C(コレクタ)端子がググッとE側に傾いて(紫色の矢印点線の弧)、E(エミッタ)端子にピタッと接触する。
B➡E間に電流を流さないと、C(コレクタ)端子は、E(エミッタ)側から離れて、本来の上側に戻り、離れる。
如何でしょうか?このイメージが掴めればOKです。
また、このイメージは間違っていませんのでご安心ください。

トランジスタのシンボル(記号)の絵をその様なイメージで捉えて頂ければ良いです。
メカニカル(機構)スイッチっぽく、シンボルのC(コレクタ)端子が動いて居ると思って頂いてOKです。
 

また、更に踏み込んでみます。イメージを固定化するためです。そして理論に近づけます。

C(コレクタ)端子がE(エミッタ)端子にくっつくか、離れているかのイメージでした。
『この時、C~E間の抵抗値はどうなっているのか?』というのを考えます。

B➡E間に電流が流れたら、ドバッと電流(コレクタ電流)が流れるのですから、C~E間の抵抗値≒0Ωになると言う事です。
これは如何でしょか? ≒0Ωと思ってOKです。これって、メカニカル(機構)スイッチのON(2つの端子が接触)と同じです。

B➡E間に電流を流さないと、コレクタ電流は流れませんから、C~E間の抵抗値はとても大きいワケで≒∞Ωと言えます。
電流が流れないんですから、もの凄く抵抗値が大きいと当然電流が流れない≒∞ΩとしてOKですよね。
こちらの場合は、C~E間の抵抗値≒∞Ω≒絶縁状体です。これは、メカニカル(機構)スイッチのOFFと同じですよね。
メカニカルスイッチのOFFは端子が接触せずに離れているのは理解できると思います。
OFFの時、2つの端子間には空気(空間)があります。絶縁状体ですね。空気間には電流流れません。
電流が流れないというのは『∞Ωの抵抗がある』という事なのです。

如何でしょか?
メカニカル(機構)スイッチでは、ONは理解できますが、
『OFFは繋がってない=∞Ωで繋がっている』という考え方なのです。これこそ電気の世界での考え方で、重要です。
これが、ちょっと難しいと思いますけど、良く考えれば納得して頂けると思います。

ここら辺で、トランジスタを学ぶ(その1)を終わります。
だいたい、ここまで理解できれば、(その2)が分かります。

現状ではC(コレクタ)側がホッタラカシになってますwので、(その2)では繋いでみます。
トランジスタの理解で一番直感的ではない部分を中心に今回は解説しました。
如何でしょうか?

多分大丈夫だと思います。
(その2)でほぼトランジスタは理解できます。もう暫くお待ちください。

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