電気設計の小牧です。
弊社がこれ自体を製品として販売するわけではないのですが、『塩化チオニルリチウム電池』を評価する機会がありましたのでご紹介したいと思います。
IoT機器の設計において、ある程度大容量の1次電池を使用したい場合、アルカリ乾電池か二酸化マンガンリチウム電池が候補になるかと思います。
(二酸化マンガンリチウム電池とはCR2やCR123といった品番で、昔はカメラのフラッシュの電源としてよく使われていた電池です)
・アルカリ乾電池:
入手性が良い、安価、使用温度範囲は+5~+40℃
・二酸化マンガンリチウム電池:
入手性はまあまあ、高価、使用温度範囲は-40~+70℃
(使用温度範囲はメーカーによって多少異なります)
屋外使用を考えると二酸化マンガンリチウム電池一択でした。
そこで今回ご紹介する『塩化チオニルリチウム電池』。
私視点でのメリット/デメリット含めた特徴と放電特性の測定結果をご紹介します。
■エネルギー密度が高い(同サイズでも容量が大きい)
■自己放電が少なく長期保存、長期使用可能
■公称電圧3.6V
■放電特性がフラット
■使用温度範囲:-55~+85℃
■軽い(アルカリ乾電池比-20~-30%)
■内部抵抗が大きい
■かなり高価
(特性はメーカーによって多少異なります)
最大の特徴は容量が大きいことです。
単1サイズで19000mAh 単2サイズで8500mAhあります。
二酸化マンガンリチウム乾電池と比較すると市販はほとんどされていませんので、電池交換どうしよう?という心配もありますが、容量が大きいので製品寿命より電池寿命が長くなるように設計してしまえば電池交換が不要になってしまいます。
放電特性がフラット過ぎるので電圧から残量を推定するのは難しいですが、電池交換が不要になれば電池残量を把握することも不要になるのではないでしょうか。
一番の弱点は内部抵抗が大きいことです。
例えばLTE系のデバイスに使用すると送信時に大きな電流が流れるため、電圧がかなり降下します。
その弱点を克服した大電流タイプ(容量は少なくなりますが…)をラインアップされているメーカーさんもありますので興味がある方は調べてみられると良いかと思います。