オススメ降圧DCDCコンバーター:RP515x
先に紹介しました、昇降圧DCDCコンバータ:RP605xのコンセプトそのままの降圧DCDCコンバータを紹介します。
日清紡マイクロデバイス社のRP515xになります。
パラメトリック検索ページを貼っておきます。
昇圧DCDCコンバーターとくらべて、降圧DCDCコンバータは広く使われているので、種類も豊富です。
旧NJR品も含めると84製品も対象があります。
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/parametric-search/?divisionFormSelect=dc-dc-switching-regulator&Topology=Buck
先に行っておきますが、この降圧DCDCコンバータも適材適所の使い方があり、それに応じた製品を選択しなければ成りません。
この設計道場では、IoT機器を対象としていますので、そう言う前提でのオススメになります。
大電流出力品等は、ここでは対象に成っていません。オススメじゃないという意味では有りません。
RP515x:降圧DCDCコンバーター
仕様書のリンクは以下、
RP515x
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/pdf/datasheet/rp515-ja.pdf
特徴
〔特徴〕
● 消費電流:Typ. 0.3μA➡完璧です。
● 出力電流:300 mA➡LPWAにも対応します。
● 入力電圧範囲:1.8 V ~ 5.5 V
● 出力電圧範囲:1.0 V ~ 4.0 V
● 出力電圧精度:±1.5%
◎ 外付けL(インダクタ):2.2uH➡小型化が可能。
◎ スイッチングモード:VFM(Variable Frequency Modulation) ※他社ではPFMと呼びます。
◎ バッテリーモニター機能付き:Vin/3(RP515xxx3x)とVin/4(RP515xxx4x)は選択
〔対象電源:使用例〕
〇リチウムコイン電池1個(2.4~3.0v)➡1.8~2.2v等を出力
◎リチウムイオン電池(放電時:3.0~3.7v/充電時:4.2~4.3v)➡降圧出力:1.8~2.8v❗
〇USB5v(5.0±0.25v)➡降圧電圧1.8~3.3v
もう、完璧です。文句なしです。他の選択肢が見つからないです。
無線IoT機器の電源で降圧DCDCコンバータを選択すると、これ一択と言っても過言では無いです。超オススメ❗
解説(Quadceptプロジェクトファイル)
Quadceptプロジェクトファイル➡
https://drive.google.com/file/d/1Oc5uU0lBWMdN1LwQ7-xJkj7mKlZilfeF/view?usp=share_link
※PCBレイアウト付き
〔解説〕
RP515x_降圧DCDCコンバータの効率曲線を観ます。
効率曲線では必ずVin電圧とVout電圧の2つの条件で効率が異なりますので、要注意です。
ここでは代表的なVout:1.8v版とVout:3.3v版とを比較してみます。
仕様書中には全ての条件を示すグラフは有りません。
自分の使用する電圧が無い場合は、どう判断するのか?ですが。
仕様書中にあるデータを比較しながら、途中はその2つの条件差から傾向を読み取るのです。
例えば、ここで言えば、「Vout:2.5vの時は、Vout:1.8v~Vout:3.3vの中間の特性なんだな~」という読み取りをします。
Vin:5.0vを合わせた時の効率を比べますと、
降圧比が大きい(出力が小さい)方が、効率が若干悪い様です。
Vout=1.8vの際に、1uA負荷時にはかなり差が出ていますね。
しかし、降圧比が大きいと、DCDCの〔Pin:Pout比〕が大きいので、引き込み電流も少なくなりますよね。
設計上の電源側の使用電流(引き込み電流)は少なくなると言う事です。
それを考慮し、計算して最終判断をします。
※P=Power(w)
後は、過渡特性のグラフやリップル特性を観ますが、これらを過渡反応することなく冷静に観て判断しなければ成りません。
※昇降圧DCDC:RP605xの項目で書いたとおりです。同じです。
〔PCBレイアウト〕の注意点
今レイアウトをしてみて、❓と思った事がありましたので、説明しておきます。
まずは、DFNパッケージ仕様のRP515Kのピン配置を確認しますと、以下の様になっています。
ここの《1pin:Vout|DCDC出力端子》という記載が気になりました。
これは、素直に読んでしまいますと
「Voutから電流が出力される」というイメージになると思います。大電流がここから出力されるイメージですね。
この時点で、正しい設計者は「ん?おかしいな?」と思うのが正解ですw
推奨回路(基本回路例)と内部ブロック図を比較して確認してみます。
Vout端子の機能を、基本回路例と、ブロック図で比較して結論を先に言いますと、Voutでは無いですね。
基本回路中に、2.2uHの右側で赤丸で括っているポイントは、確かにネット(繋がり)では、Voutです。
だから、1pinもVoutと書いたのでしょう。間違っては居ませんが、勘違いし易いです。
しかし、上に貼っている端子説明の図の機能には(端子の機能として)「DC/DC出力端子」と記載があります。
これは、設計者を混乱させかねません。
ネット(繋がり)としては間違っていませんが、これはPCBレイアウトの際にミスを引き起こす可能性があります。
結論から言いますと(私も混乱したんですが)、他の日清紡マイロデバイス社(旧RICOH)のDCDC電源IC仕様書と比較しますと、
同様の機能を示すpinの説明は、”Vfb|フィードバック端子”となっています。これなら納得です。
是非、参照してみてください。紹介済みのRP605xの仕様書page5では同等の機能pinをVfbと表記してますw
https://www.nisshinbo-microdevices.co.jp/ja/pdf/datasheet/rp605-ja.pdf
正しくはVfbです。仕様書の間違いです。
※間違いではありませんが、他の仕様書ではちゃんとVfb表記ですので、統一されていません。
よって、担当者の間違いだと思います。
多分、この後、修正がはいると思いますw ここを観てるみたいなのでw
ここ、五月蠅い様ですが、Vout表記としてPCBをレイアウトした場合とVfb表記としてレイアウトした場合の違いを示します。
仕様書通りで、解釈の違いによってどれ程、PCBレイアウトが変わってくるのかをやってみました(下図)。
1pin:Vfbと表記された場合は、
VoutをモニターしてFeedbackする入力なので、大電流がICの1pin(Vfb)を通らない様にします。
Vfbは出力・整流された電圧をFeedBackしてモニターする大事なポートです。
ここにLxポートから出力されて、L:2.2uHを経由したスイッチング電流は、即座に整流C1で整流されねば成りません。
整流された電圧をモニターするだけなので、別ルートにしないといけません。
PCBレイアウトの世界では、『共通インピーダンスに成らない様に配線する』という事です。
出力整流用コンデンサC1の内側から別ルートで1pinに細い線で繋ぎます。
この細い線には、スイッチング電流は流れない事に成ります。
1pin:Voutと表記された場合は、
1pinがDCDC出力だと言うのですから、電流を出力するポートと考えてしまいます。
なので、必ず1pinは4&5pin(Lxスイッチング出力)がインダクタLを経由して必ず通る様にレイアウトします。
それを経由して、出力整流用コンデンサC1に繋がる様に太い線を繋ぎます。
こうすると、Lxスイッチング電流がLを経由し、C1で整流される前に1pinを経由後、漸くC1で整流されることに成ります。
「電流は光速と同じ速度なので、変わらないでしょ!」とか思ったら大間違いです。
1pin内の回路も同様に高速(光速)でレスポンスしますから。
また、これは当に『大電流配線ラインの共通インピーダンス構成』と成っていますので、アウト中のアウトです。
如何でしょうか?
仕様書の表記をそのまま真に受けて、PCBレイアウトをするとこんなにも違います。
もしかしたら、殆ど変わらないのでは?と思われる方が居るかも知れませんねw
Voutとして右側のレイアウトをしますと、このRP515xは実際には本来の特性が出ません。
Voutの安定性が、出力の負荷側の状態に応じて、Vfbレイアウトよりも確実に不安定になります。
実際作ってみたらビックリするくらいの特性差が出るでしょう。
更に言うと、回路図は設計者が描いて、PCBレイアウトは外注先のレイアウト専門業者に描いて貰うという企業さんも多いです。
その際に、回路設計者がこの点を気付かずに、外注先でレイアウトして貰うと、Voutとしてネット(繋がり)だけをベースに描きます。
すると、試作後に「なんか安定しないな~。この電源ICは不安定だ」とか成るわけです。
実際は、仕様書を注意深く解釈してなかったのが原因という事なんです。
要注意です。
ここは仕様書のミスと考えた方が吉です。
日清紡マイクロデバイス社には言っておきますww
ただし、設計者であれば、この位のミスは察する位の力が必要でしょう。
私は直ぐに「は?え?なんで?」と思いましたw
昇降圧のRP604xで降圧DCDCとして使うのはオーバー過ぎると思われる方は、
この降圧DCDCのRP515xが超オススメ❗です。
是非検討して下さい。
パターンも描いてみたら、なんと1層で引けました。これはIC設計者のセンスが良いからですね~❗
私じゃ有りませんヨ❗
日清紡マイクロデバイスの設計担当者様です。 素晴らしい❗
いや~日清紡マイクロデバイスの製品の紹介みたいに成ってきましたね。
私は何も頂いて居りませんので、大丈夫です。
素直に客観的に素晴らしいICは素晴らしい❗として紹介しているだけです。
ほんとに、このシリーズは超オススメです。
勿論、私のアイディアの+BM(バッテリーモニター)機能が載っているからというのも有ります。
これ、ホントに皆さん使って欲しいです。
バッテリーモニター機能を装備しているというのは、ほんとに助かりますので。