2020年の10月末に私が内外に《アロケーション注意警報》を伝えてから11ヶ月になります。
思い起こせば、2020年10月に発生した旭化成の延岡工場の火災から半導体業界の不運の始まりだったと思います。
そして、2021年の春以降は、皆さんご存知の半導体デリバリーの想像を超える長納期化問題が広く知られるようになりました。
2021年の9月にはもう、納期が70週やら、80週やらと、《週》じゃなくて《日》なんじゃないの?と思ってしまいますw
私自身は半導体・電子部品業界側の人間では有りませんが、その原因の把握には務めてきました。
色んな方から「原因は何ですか?」と良く聞かれます。
結論を言いますと、メディアによる分析記事は正確ではなく、答えは『原因不明』と言えますw
結論は全く価値がないもんで申し訳ないんですが、本当に《真の原因は不明》なんです。
余り知られてませんが、電子部品の不足問題というのは、その規模の大小がありまして、数年周期で訪れます。
※以降は、半導体に留まらず、電子部品(総合的に、LCR等パッシブ部品+半導体)と括ります。
大きいのは、私の経験では、5~7年サイクル位の印象です。
少なくとも、パナのエンジニアだった1998年以降は、その原因を徹底的に追いかけ、把握しているつもりです。

◎良くアロケーションという言葉が使われますが、説明しておきますと、「アロケーション」=「割当て」の事です。
 部品を顧客に割当てするという意味なんですが、実際は顧客の優先順位を付けて販売するという意味です。
 分かりやすく言うと、「上顧客にしか売らない」って扱いの事を示しますw

私のエンジニア人生で最大の調達問題だったのは、1998~2000年を中心に発生していたアロケーションです。
この時の最大の要因(原因)は、2G後期~3G切り替わり時期で、携帯電話の猛烈な世界的需要増でした。 
当時の記憶を呼び戻しますと、携帯電話の普及増が毎年2倍以上という猛烈な成長期でした。 億台単位の売上台数が2倍以上ですから猛烈です。
2億台➡4億台➡8億台といった推移ですから猛烈なのが理解できると思います。

実は、固定電話網の敷設と維持というのは先進国しか出来ないんです。
当時、発展途上国と言われた国々は固定電話網を国内全域に敷設するほどの予算がなかった時期でした。
そのような国々では、携帯基地局を敷設しさえすれば、簡単に国民が満遍なく電話を利用できるという便利なシステムでした。
※なにか、たかが1990年代の話をしているだけなのに、お爺ちゃんになったような古の記憶を喋ってるようんですねw

こう言う背景から特に発展途上国(当時はそう言ってました)の携帯電話の需要が急激に増えたというのもあります。アフリカやインドなんかも同じ状況です。
私の記憶では1999年頃の東南アジアでの普及増のペースはもの凄かったです。
この頃の圧倒的な携帯端末販売シェアを持っていたのが、NOKIAです。
今ではNOKIA端末の見る影すらも無くなっていますが、当時の東南アジアでは90%がNOKIAじゃないか!?と思う程でしたw

この発展期のアロケーションの中心は、RFのフィルターであるSAWフィルターや、パッシブ部品(特にL)でして、もの凄かったです。
当時の携帯電話にはこのSAWフィルターが多数入ってましたので、一台でのSAWフィルタの消費数量も総数では、もの凄い数になりますよね。

何せ、旺盛な需要に応えるべく、NOKIA・SAMSUNG・MOTOROLAなどは、各部品メーカーの生産ライン(で生産される部品)をⅠ年分まるごと買い取る
という信じられない様な発注をやっていました。この頃のパッシブ部品のシェアは大半が日本メーカーでした。勿論ヨーロッパの企業もありましたが。。。
そして、バブル崩壊で多大なるダメージを受けていた日本のパッシブ部品メーカーは、新規設備投資(工場の新設や増強)に躊躇があり、新工場の新設
の判断ができないという状況。実は、この間隙を縫って設備投資に旺盛だったのが、台湾・韓国・中国の部品メーカーでした。もうイケイケですw
ここずっと日本メーカーの凋落ぶりが記事にされていますが、日本の電子部品メーカーの潮目はこの頃だと思っています。
新規設備投資の判断遅れです。
※(注記)本当はちょっとニュアンスが違うんです。日本の電子部品メーカーは少々判断が遅れたのは事実ですが、その後凋落したわけではないんです。
    真実は、今でも世界最強ですw 何方かというと、この潮目の時期に完成品メーカーの凋落の潮目だったというのが正しいかと思います。
これを考慮しますと、この頃のアロケーション問題の原因は明確です。携帯電話の普及です。

実はアロケーションには必ず『明確な原因と根拠』があるのです。
大中小規模を問わずに書きますと、
・1995年以降の猛烈なPC需要の増加
・カメラのデジタル化
・ブラウン管テレビから液晶テレビへの移行
・PRIUSの登場 ➡当時は「PRIUS1台で30cmウェーハーを丸々1枚使う❗」という話も良く耳にしました。
・などなど

では2021年の電子部品調達問題の『明確な原因と根拠は?』と言う疑問に行き当たります。
何かあります? 無いんですよ。。。
上述したような「成るほど納得!」と言える様な、急で猛烈な需要を満たす『新製品』って見当たらないんです。
有りませんよね~w 有ります??

まことしやかな話はチラチラ耳にしますが。。。これまでのアロケーションの原因となる様な猛烈な需要増を超えるような『新製品』って無いんです。
正直、1998年頃の最悪だった状況よりも、2021年の電子部品調達問題は2倍以上はインパクトが大きいです。
それ程の需要がなければ、こんな事には成りません。
・iPhoneの需要増? ➡いやいや、想定内でしょう。
・巣ごもり需要でタブレットやPCの需要が激増? ➡いえいえ、PCも有りませんからw PC業界も生産調整してます。在庫ないですw
・EVの需要増? ➡世界中、車メーカーやバイクメーカーは生産調整してます。EV企業のダメージはそれ以上かと。
・PS5やNintendoSwitch? ➡こちらも生産調整してます。やはり入手難です。
・Appleは新製品を販売しているじゃないか!やはりAppleの需要増が原因では? ➡いえいえ、Appleは業界の『天竜人』ですからw 別枠ですw

でしょ!?、だから『原因不明』だと私が言うのです。。。w 無いんですw 原因と根拠が❗

やはり、原因不明でしょ❗❗❓w

私なりの結論はというと、他所では言われてませんが、
『コロナを起因とする、ブレーキの衝撃波現象』
と言ってます。

電子部品を作る際には、その下流にもの凄い数の企業が関わっています。
コロナ以前でも、実は、ギリギリのキワキワのスレスレで、世界の需要に応えていたのです。
各1本1本の各ネジが、亀裂が入らない様にと、ギリギリでエンジンが持ちこたえて動いて居た。
しかし、ある1本の亀裂に始まり、全面的に支えられなくなって崩壊するイメージ。
高速道路で意味不明の渋滞が、突然解消されるあの現象=ブレーキの衝撃波現象。
こんな感じが原因だと思っています。

多数の企業が関わり、ギリギリでデリバリーを支えていた電子部品が、コロナを起因として一角が崩れ(人員問題含め)、ガタガタと崩れて行ったという分析です。
な~んか、社会扇動家が騒いで居た新たな課題のSDGsとやらが空虚に聞こえてしまいますねw ほんっと空虚ですw
本当の持続可能性(SDGs)なんていうのは、身の回りで当たり前だと思っていたことを維持する事こそが一番大切なんだと言う事です。

これは、世界中の多数の企業の努力と責任、そしてそれに関わっている人々の苦労と努力で支えられていたって事です。
それを持続できるように考えることコソが、本当のSDGsだと思う私です。

何も、政治的な発言の意図ではないんです。部品メーカーやその下流企業に対して、「感謝の気持ち」を表してきましたかね?という問いなのです。
部品が入って当たり前、注文したら直ぐ入庫するのが当たり前。。。実はこれは当たり前じゃなかったんですよね。
このデリバリー問題で、各代理店やメーカーには、客先から罵倒の連鎖の様です。毎日毎日デリバリー確認の連絡が入って疲弊されています。

私なんか、「そ~んなに、毎日毎週確認した所で、何も好転するわけないでしょ!w」って思います。
私もデリバリー問題の被害を被っていますが、慌て騒いだ所でどうしようも無い話ですw いや、本当に困ってるんですよw でも《笑》ですw

ちょっと嫌味を足せば、2011年のタイ洪水で半導体のデリバリー問題となった後に、BCPとかなんとか又ぞろ面倒クサイ要求をしていた大手メーカー❗
電子部品メーカーに対して、意味の無いクダラナイ要求と無意味・無価値・無駄な作業を強いて、なんか意味あったんでしょうか?w
あの頃から何も変わってないんですよね。
ホントにスジが悪いというか、なんというか。。。

前向きに考慮すると、真に私の予想する『ブレーキの衝撃波現象』が原因であるならば、突然解消する可能性の期待はあります。
ただ、余りの原因不明感と『コロナ起因』が真の原因であったならば、巷の予想通りに22年一杯も影響が残るという最悪のシナリオもあり得ます。

ここで、私が言いたいのは、
・部品が調達しにくいのは皆同じです。
・無いものは無い!入る時は入る。
・どうしても必要ならば、長期発注を掛ける。お金を払う❗
・今後、部品の価格は上がる。これを受け入れる。
・今やるべき事を、部品が無い今の内にやっておく。そして、備える。
・メーカーや代理店は必死になって頑張っている方々なので、『感謝』の気持ちを忘れない❗

これが、今我々が出来る最善の事だとおもう私です。

どんなに大変な時でも、困っている時でも、『素直・謙虚・感謝』この気持ちを絶対に忘れない。
万人共通の問題にイライラしない。ど~~~んと構えて、やるべき事をヤル。

メディアでは聞けない、私の電子部品長納期化の分析です。
ただし、答えが『原因不明』なので、自慢するほどの事でもないんですけどね~w

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