電子回路設計(初級編)②ですが、もういきなり『LEDを点灯』させてみましょう。
教本の様な「どうでも良い内容」はスキップして、実践的に回路図が分かる事を目的としています。実践です。
前回の《オームの法則》の次に必要な知識は《ダイオード》です。
回路設計を理解する上で欠かせないのがこの《ダイオード》なのです。それは今回の解説で良くわかると思います。

ダイオードとは、”Di-(ダイ)”+”-ode(オード)"なのですが、”Di”とは「2極の」という意味になります。
因みに、「3極の」というのは”Tri-(トライ)"となります。私の趣味の『真空管アンプ工作』では、「トライオード真空管」が好まれまれ、「3極管」と言います。 
「4極の」は”Tetro-(テトロ)”といって、「4極管」は「テトロード」と言います。
「5極の」は”Pent-(ペント)”と言って、「5極管」は「ペントード」と言います。
※大学や高専の人は知ってると思いますが、結局、《モノ/ジー(Di)/トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ/・・・》のアレですw
この昔の真空管時代の流れから、シリコン2極性の部品としてダイオードという名前で言われていると思って良いです。
機能としては、「整流」という機能を持っています。 「整流」とは「片方向にしか電流を流さない」という機能になります。

だから、ダイオード=「片方向にしか電流を流さない」機能を持っているという事になります。
下図に沿って言えば、カソード側をアノード側より高い電圧にすると、逆電圧になり、全く電流は流れません。
アノード側をカソード側より高い電圧にすれば流れます。※後述しますが、「どの位高い電圧」という概念が出てきます。

家庭用の交流100vから直流電圧を作る際には、このダイオードを使って、「整流して、直流を作る」回路を作ります。
ここは、初級編では難しいので触れません。「そう言う箇所に使うんだな~」位の理解で良いです。
今の時代では、そう言う回路すらも知らなくてもOKという現状でもあります。

回路設計の上では最重要部品と言えるこのダイオードなのですが、幾つものタイプがあります。
代表的なダイオードは、正確にはシリコンダイオードと言われますが、「ダイオード」=「シリコンダイオード」という事です。
今回は、発光ダイオード(=LED)を使って行きます。 ※他のタイプのダイオードは取り敢えず知らなくて良いですw

発光ダイオード(LED)を選択したのは、身近でイメージし易いからです。オマケに光りますからモチベーションも上がりますw

ダイオードを理解する上で、最も重要な特性が《Vf(ブイエフ)》という特性です。
これは、
「アノード側電圧をカソード側よりもどの位高い電圧を掛けたら電流が流れるかの値(v)がVf」
でもあり
「ダイオードに電流を流したら、カソード側からみてアノードはVf(v)分高い電圧になり、両端子間の電圧は定電圧になる」
と、どちらの表現でも正しいです。Vf発生の順番・経緯が逆なんですが、どちらも正解という位に緩く理解します。

このVfが世の中になければ、回路やICは作れないとっても過言ではないです。これはホントに神様ありがとう!です。
その位、重要な要素がVfだと思っておいて下さい。

ダイオードはどう言う部品なのか?を明確にします。
①「電流が流れたら、端子間が定電圧(コレをVfと言う)になる」と言う事です。
 ※「電流が流れたら!!」です。
 ※「電流が流れてない」時は、それは回路でも何でもないので、必ず「電流を流してあげないといけません」。
②Vf(v)は、ダイオードのタイプに依って違う。
 ・シリコンダイオード:Vf=0.7v
 ・古い暗いLED発光ダイオード:Vf=2.1v
 ・新しい明るいLED発光ダイオード:Vf=3.1v ←青色LEDや白色LEDのような最新のLEDです。
 ・ショットキーダイオード:Vf=0.3v ※Vfが少しずつ違うモノがありますので、面倒です。今は知らなくてOK
 ・ツェナーダイオード:これはVfという概念とはまた違いますが。電圧を固定するというのは同じです。色んな電圧があります。
こういうもんだと思って下さい。
まぁ、「新しい明るいLED発光ダイオード」くらいしか最近は使わないので、これ1本で解説していきましょう。
 

ココまでは大丈夫だと思います。
今回は、「新しい明るいLED発光ダイオード」を使いますから、Vf=3.1vとなります。

改めて書いて置きますが、
「発光ダイオードに電流が流れたら、ダイオードの両端電圧は固定の3.1vとなり、発光する」って事です。

下図を①→②→③→④の順で読んで下さい。
①「新しい明るいLED発光ダイオード(青)」を使いますから、Vf=3.1v。定電圧(電流が流れれば決まる電圧)になりますから。
②電流を流さないと行けませんので、Vf=3.1vならば、電源Vは3.1vより大きくないと、電流が流れません。
③電流が流れるには、V≧3.1vというか、V>3.1vにしないとダメですね。電流を流して定電圧3.1vを発生させるには,Vfより大きな電圧が必要です。
④ジワジワと電圧を上げてV=3.1vにしたら流れます? それ以上の電圧でないと、発光ダイオードに電流流れそうにないですよね。せめて、5v位にしましょうかね。そもそも初級編①では、『電圧は固定』のお約束でしたし! 使いやすい5v(USBの電源)が良いでしょう。
⇒実はこの位『テキトー』で良いんです。別に9vでも10vでも100vでも良いんです。お約束通りに、固定しておけばOKです。

こうやると、なんかオカシイ点に気付く筈です。
真ん中でぶった切って、左側が5.0v、右側が3.1vになってます。あり得ませんね!
差分の1.9vは何処に消えたんでしょうか???

実は、この回路を使うと「発光ダイオードが一瞬で壊れます」。
一旦、パッと発光はしますが、直ぐに御臨終となりますw 回路が成立してないからです。 これを今回解説します。

余談ですが、電気設計エンジニアを自称する(自称)技術者でも、これをやってしまう人は多いんです。
「そう言う人も居る」のレベルでは無く、「結構居る!」の方です。
私の旧職の大企業の開発研究所技術者や、《工学博士号》と名刺に堂々と書いてる30年選手位でもやりますw
試して見たら良いと思いますよ~w ホントに多いですからw 40歳台や50歳台の(自称)技術者でも堂々とやらかしますw
実際に昔雇っていたそう言うオッサンが「小橋さん!この中華製LEDは全部不良です!」と言ってましたからw
しかも一人だけというワケでも無しw 面接でこの質問すると殆ど全滅でしたw

因みにですが、本当に「これが分からない人は、絶対に回路設計はできない」という事になります。
この理解の延長や応用こそが《回路設計》なので、「これを知らない」=「全く回路設計が出来ない」なのです。
その位に重要な回路なのです。一番大切な回路と言っても良いです。

今回のこの回を理解したら、そう言う人達も越えられますので、一気に理解してしまいましょう!

ここでの最大の注目点は、「1.9vは何処に行ったのか?」という話です。
真ん中(緑点線)基準にして『=』で計算式を書くと、
『5.0v=3.1v』ですから全く話になりませんw 『5.0v≠3.1v』ですよね。

この差分1.9vは、V=5.0vとVf=3.1vと必ず固定と決まっているワケですから、全く辻褄の合わない電圧という事になります。
辻褄の合わない計算式であり、且つ、辻褄の合ってない『回路』という事です。

この解決していない差分の電圧を、V残(電圧)と呼ぶ事にします。

正しい回路とするため、このV残(v)を、巧く辻褄合わせる為にR2を追加するのです。下図の回路の通りです。
※LEDとR2は上下を変えても同じ回路です。どちらでもOKです。

すると「R2の両端にV残(v)がある」事になります。少なくとも、辻褄は合います。
差分のV残=1.9vで固定です。 ※他の電圧も固定ですから。

ここで、このR2部分にフォーカスして、《オームの法則》を適用します。
V残=1.9v
I=流したい電流値(A)
を決めれば、R2は《オームの法則:R=V/I》で値は簡単に計算できます。

次に、よ~く見てみると、R2に流れている電流は、配線を追うと、当然ですがLEDにも同じ電流が流れます。
=「LEDに流したい電流をR2で決めている」と言えます。これが結論です。

このR2は電源Vが固定で、Vfが固定ですので、R2を電流が流れる配線上に配置すれば、「LEDに流れる電流値を決めるのは、抵抗R2そのもの」という事です。
こう言う役割をしているので、このR2の使い方を《電流制限抵抗》と呼びます。
役割としては《電流決定抵抗》とも言えるでしょう。

コレこそが《回路設計》なのです。
《回路設計》とは、『ダイオードの定電圧特性を利用して、差分V残(v)をR2で吸収させ、そこに流す電流をR値で決定する事』でしか無いのです。
ICの中身も、複雑な回路も全てにおいて『コノ使い方』の複合・組合せでしかないのです。ホントです。

だから、コレを覚えれば、回路設計の最も大事な一本の《刀》を持ったことと言えます。
後は、「この《刀》を如何に知恵を絞って、巧く・面白く・格好良く使いこなすのか?」だけなのです。

如何ですか? 実は超簡単なんです。

これから先の回路設計の基礎としては、ほんとにコノ《刀》を覚えて応用していけば、大抵の回路は作れます。

私が趣味でやっている『真空管アンプの工作』では、この『刀』をさらに巧く使わないと開発できないんです。
特に、真空管の回路設計は、現代のトランジスタ回路設計よりも柔軟な発想が無いと作れないんです。
しかし、『真空管でアンプの回路を作る』様な人は、更に独学で(本も沢山あります)学んでやれば良いんです。普通の人はやりませんよねw

一般的には、もう「トランジスタ回路が分かれば充分(過ぎる)」と言えますので、初級編の後半ではちょっと触れてみようとも思います。

なんと次回は、その「トランジスタ」を理解して頂こうと思います。必ずイメージで理解できるように務めてみます。

巷では、ラズパイで『LEDを点滅・点灯させる』というのがチラホラ見られます。こう言う事をする場合にもトランジスタを理解してないとダメなので。実用性を考えたら、もうイキなり『トランジスタ』を初級編で投入したほうが合理的で実践的だと思います。

 

弊社Braveridgeのアプリ開発チームも読んでいるようでして、質問がありましたので追記します。

「回路設計が出来る」=「回路が読める(理解できる・納得できる)」を目的として、この初級編を書いてます。
四角四面に大学の理論の様な理屈で、「そ~では無い!」や「簡単に言うな!」や「誤差が考慮されてない!」とか言ってくる屁理屈親父が結構居るんですよw。昔からw ほんっと面倒クサイですw

立派な成績で電子工学部を卒業した私の友人でも「全ての電気現象は《マクスウェルの電磁方程式》で全て!説明できる!」と豪語してたんですが、LEDの点灯回路(上で説明した内容)は作れませんでしたww
そう言うもんなんですよw

「回路設計」を理解する上では、ゆる~く・生ぬる~く・直感的に・イメージを掴む事の方が重要なんです。
「文系でも分かる電子回路」とかいうタイプの本も、大学時代に読みましたが、理解には全く役に立ちませんでした。

私の《初級編》は、大事な点にのみ集中し、ほんとに回路が読める・作れる事を目標としています。実践です。
そして、この《初級編》で、直感的に理解した後に、『教本』を読み直してみたら良いと思っています。

ではアプリエンジニアの質問「そもそも電圧ってのが分からないんですよね」に答えます。

「乾電池は1.5v。
 3.0vが欲しければ、2個直列で使う。4.5vが欲しければ3個直列で使う。6.0vが欲しければ4個直列すればよい。
 電源の容量を増やしたければ、端四⇒端三⇒端二⇒端一と大きいのにすれば良い。
 流行の充電タイプのLi-Ion/Li-Po電池は3.7v。これも2個直列すれば7.4v。つまり倍数になる。
 ちょとと古い、Ni-Cd充電池やNi-MH充電池は一本あたり1.2vで、その倍数で何個使うか決めれば良い。
 電圧が高いと、V残(v)が多くなるので、R2(電流制限抵抗)の選択幅に余裕がある。
 ここら辺は、実際の実用性も考えて決めれば良い。
 電流は電源(電池)の高い方(+)から(-)に流れる。 
 電圧は何ボルトが良いのか?ってのは、大体テキトウで丁度良いところを決めれば良いだけ。
 面倒臭かったら、USBタイプのACアダプタで5v出力だからそれ使えば良い。
 事情があって12vとか欲しかったら、秋月通商でAC/DCアダプタ買ったら良い。
 《電圧》ってそう言うもんだって覚えておけば良い!
 ただ、本気で設計しようとしたら、電源についての理論と理屈があるので、それは中級編で教えるわ~」

って言ったら、なんとなく理解出来ませんかね~?www

多分、大丈夫なんじゃないかな~と思うw
余りに乱暴でテキトーな教え方ですが、実の所「そういうもん」なんですw 初級編では、この位の理解で完全にOKです。

(注:秘書からの質問がありましたので)「R2の選択に余裕がある」というのが分からない。
  =低い電源だと、R2は小さい値になります。小さい抵抗値は実際の実践上は使いづらいんです。余り手持ちも保管してない。

  電源Vを変えて、V残(v)を計算し、LEDに10mA流す場面を考えます。
  「V=5.0v、V残(v)=1.9vでI=10mA流したい」⇒R=1.9/0.01(A)=190Ω
  「V=10v、V残(v)=10-3.1=6.9vで、I=10mA流したい」⇒R=6.9/0.01=690Ω
  「V=15v、V残(v)=15-3.1=11.9vで、I=10mA流したい」⇒R=11.9/0.01=1190Ω=1.19kΩ (※kΩとはキロΩで、1000倍という意味)
  電圧が大きい=抵抗値も大きくなる=計算で出た端数が1/10~1/100の部分は四捨五入しても良く成るw
  小さい抵抗値(1~100Ω辺り)は、実際の設計では余り使わないので、面倒なんですw
  別に小さくてもOKなんですが、意外と手持ちの抵抗は1kΩ~10kΩを使う場面が多いんです。
  つまり、使い勝手が良いという意味でもあります。ここら辺の抵抗を使うと、「手持ち在庫」が揃っているので使い勝手が良いんです。
  1Ω~100Ω付近は、実践的には余り使わないんですよ。なので、使い勝手が悪いんです。

  また、抵抗値の選択というのはE12系列という基準で作られているんです。1Ω/2Ω/3Ω/...という感じじゃないんです。
  【E12系列】※実際に売ってる抵抗値の値
  1段目   1.0Ω/1.2Ω/1.5Ω/1.8Ω/2.2Ω/2.7Ω/3.3Ω/3.9Ω/4.7Ω/5.6Ω/6.8Ω/8.2Ω
      2段目     10Ω/12Ω/15Ω/18Ω/22Ω/27Ω/33Ω/39Ω/47Ω/56Ω/68Ω/82Ω
      3段目     100Ω/120Ω/150Ω/180Ω/220Ω/270Ω/330Ω/390Ω/470Ω/560Ω/680Ω/820Ω
  4段目   1.0kΩ/1.2kΩ/1.5kΩ/1.8kΩ/2.2kΩ/2.7kΩ/3.3kΩ/3.9kΩ/4.7kΩ/5.6kΩ/6.8kΩ/8.2kΩ
        ~
  って変なラインナップなんです。

  上で計算で出た抵抗値を実現しようとすると、
  190Ω=180Ω+10Ω
  690Ω=680Ω+10Ω
  1.19kΩ=1.0kΩ+180Ω+10Ω (≒1.2kΩでもOK。10Ω分の差は明るさに殆ど差が分からない。1/100レンジの誤差ですからね)
  もし、計算したR=193Ωとかになったら、193=180+10+2.2+0.82とかになりますよね。そう言う小さな抵抗値は余り売ってないんです。
  そして、「値が大きい方が、ピタッと合わせたければ、うまい具合に合わせて作れる」様に感じれていただければ伝わったかなと思います。
  できれば「1kΩ~10kΩ辺りで収まってくれれば楽なんだけどな~」という感情論ですw
  しかし、一方15vというのも珍しいんで、どっちもどっちでは有りますw
  
      また、初級編をすすんでいくと、ここで私が言ってることが分かるようになってきます。

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