散々思考した上での設計の大方針転換の今w

回路設計・基板レイアウト設計の現実とはこういうもんなんですよ~という事例が発生しましたので、ご紹介をw

あるちょっと複雑な製品の開発を私自身がやっています。
かなり大変な設計でして、回路設計と基板レイアウト設計を平行しながら1月間程(それ以上かも)かけて完成していました。
もう試作してよいレベルまで仕上がってました。
また、1回の試作で確実にすべてが動くことも間違いないレベルまで仕上げてます。

ここから、機構設計の筐体の詰めをしていたら、機構構造の大幅変更した方が良いとの判断。
すると、基板サイズも大幅に変わると言う事に成りますが、やむを得ません。小修正で止まる様に工夫をしていました。

ここから、再びあ~でもない、こ~でもないと機構エンジニアと議論を繰り返していまして、結論としては、
『組立構成の変更(工場での組立性の大幅改善)』をやろうとの結論になりました。

そして、その結果、より良い基板内構成と、将来の追加無線モジュールへの対応も含めて、再度練り直しした結果。。。

4層基板のこの完成済みの設計の全ての配線を削除し、ICやモジュールの再レイアウトし直しからやり直す決断をしました。
たまにこんな決断を出す事があります。

1つ目のキャプチャ画は、基板レイアウトは完成済みで、基板外形を広くしようかな~と新外形図を重ねて思考している状態。
2つ目のキャプチャ画は、1つ目のキャプチャ画(完成済み)から配線とVIA(スルーホール)を全消ししてしまった後の図です。

全てを白紙に戻す様な状態です。

ちょっと普通の企業ではやらない決断ですが、私は結構やります。
納得のいくまで徹底的に追い込むのがプロの設計だと思っています。たとえ、全面やり直しとなってもです。

そして、やり直しなんですが、全部私1人の作業となります。
一応、社長なんですが、こう言う設計も全て社員と変わらず、やっています。

社長であろうが、こう言う無駄な時間とリソースを費やすのも、技術者の仕事の一部なんです。
若いエンジニアの方々も参考にして頂ければと思いますw

完成済みの基板

方針転換し、やり直しのスタートライン

今の私の気持ち

トンでも無い決断です。
普通、こんな莫迦な決断はしませんよね。
1ヶ月以上も掛けて仕上げた基板ですが、全消しに近いです。配線レイアウトも完璧だったんです。
でも『消す』んです。

それは、
・工場での組立性の大幅改善
・将来の無線規格対応の追加を見込んで
・ユーザーの使い勝手の更なる改善
・メンテナンス性の大幅向上
・機構デザインの見直し
・etc etc

折角、時間を使って創り上げた基板でも、「プロならばやり直すべき」との判断です。

但し、ICの仕様書の読込み、配線の流れのイメージ、ICの端子のレイアウト等々は一度頭に入ってますので、この白紙からのやり直しに掛かる時間は更に短縮できるとの確信があります。
修正前の基板レイアウトは回路設計(修正や変更も含め)と並行してやってましたので、1ヶ月以上掛かりましたが、おそらくやり直しは1週間程度で終わる予想です。

私は社長ですので、残業手当も休日出勤手当もありませんので、会社としては、仕入工数や人件費のマイナス分はゼロとなりますw
日程のズレからくるロスは出ますが、製品の完成度という点でいえば、白紙からのやり直しの方がメリットはあるとの決断です。

この様に、設計ってこういうケースもあるという事を知ってもらおうかと思い、ブログにしました。

徹底的にベストを尽くそうとすると、完全に無駄な作業をやってしまったという結末もあります。
最初からそうすれば良かったじゃ無いか!とも思いますが、そう簡単な話でも無いんです。
一旦、仕上げてみたからこそ分かる課題や問題や想定される将来の姿なんてのは、やってみないと分からないんですよね。

かなり先読みして設計する私でも、こんなもんです。

しかし、そう言う無駄は結果的には『無駄ではない』って所も大事だと思う私です。
勿論、部下にはそういう指導をすることは有りませんけどねw やり直しなんて命令出来ませんからね~w
だいたい、私の設計案件で良く発生します。

『プロ精神』じゃなくて『セミプロ精神』

このテーマは別の機会にまた書く予定ですが、簡潔に。

本当は、『プロ』ならばこんな決断はしません。最も効率が悪いですから。
超・非合理的決断ですよね。
しかも、修正前の設計も「最悪」では無いんです。それで充分ではあるんです。
それならば、無駄なリソースの追加や無駄な時間の浪費をかけてやり直すなんて、プロならば本来はしません。

私は自分の哲学として『プロ精神』よりも『セミプロ精神』の方が上位だと確信しています。

セミプロ精神だからこそ、《美しい・効率的な設計》ができるんだ!と信じています。

プロならば、美しさなんかどうでも良く、時間的効率を重視して設計をするもんです。

ただ、私はプロよりも上位の『セミプロ』なんだという自負があるので、どうしようもないんですよねw

そして、毎度思うのが、「世の中こんなもん」ですw

なんともグダグダなコラムですが、ご勘弁をw

技術屋オヤジのよもやまばなし(四方山話)

田舎のマイクロ企業の社長ですが、ほんっとこう言う場面では自分でも考えさせられます。
効率や合理性を唱える一方で、こんな無駄な非効率な決断をしてしまうんですからね。
社長としては正直、『失格』でしょう。

何と言っても、そのままでちゃんと企画した通りに動くんですから。
しかも絶対に1発で動く保証付きです。それだけの脳内シミュレーションも完了済み。

とは言え、仕事ってのは具現化していく中で、色々とアイディアや知恵が生まれてくもんだという経験値があります。
仕上げないと、途中まででもやってみないと見えない『隠れた現実』です。
「こんなものは、着手する前に充分な検討をしてないからだ!」なんて、上司が居れば愚痴られるでしょうがね。
しかし、そんなのやってみないと分からない事だらけってのが世の中です。
技術の世界では尚更です。

「社長で良かったわ~」と思うのは、こう言う無駄で有効な決断をしても、部下からは「どうせ、小橋さんは土日に仕上げてくるんよね」と思われている所。
残業代も休日出勤手当も無くw

そして、こう言う決断をしたとしても、この白紙からのやり直しの結果は、間違い無く『その前よりも、より完璧』という事。

そして、そのモチベーションは更に向上し、より良いモノを仕上げてみせるという心地良い目標設定とでも言いましょうか。

なかなか、設計は楽しいもんです。
そしてそれは、いつも一見合理的でも効率的でも無いようにもみられます。

しかし、更に時間フェーズを長く捉えてみれば、結果的に合理的・効率的になるもんだという視点も必要なんだと、言い訳けしておりますw

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